第46話

46

「おい!」

「きゃっ!?」


突然腕を掴まれたサリアは驚きに小さく悲鳴を上げた。振り返って自分の腕を掴む相手を確認すると、その大きな薄紅色の瞳を零れ落ちんばかりに見開く事となった。


そこに立っていたのはなんとロバートだったのだ。


今日はユリウスが公爵と仕事の関係で話をするために公爵邸を訪れると言うので、最近では珍しく今日はザリアとロゼリア、ユリウスとシャーロットで別行動を取っていた。


2人で遊ぶのは前回同様渋ったのだが、シャーロットが自分は今回は1人じゃないし、もう寂しくも苦しくも、疎外感も感じ得ないから大丈夫、と気を使ってくれたのでそのお言葉に甘えて2人で街に来ていた。


可愛らしい小物や、普段着に使う為の簡素な動きやすさ重視の洋服、家で開くお茶会の時に出す為のちょっとしたお茶菓子などを見繕ったりしながらぶらぶらと歩いていた時に突然起こった出来事だった。



「……お前、あのひとといつも一緒にいるだろう。」

「……?あのひと?」

「……ええ。でもとりあえず手を話してください。痛がっているでしょう。」


暫くもごもごと口を開いたり閉じたりしたあと、ロバートは口を開いた。ロバートからの問いかけに腕を掴まれた当の本人であるサリアはピンと来ていないようだが、ロゼリアはすぐに彼が言っている『あのひと』がシャーロットの事であると言うことが分かったようだ。



「彼女はいつからお前たちといたんだ?」

「まずは手を離してください。話はそれからです。」


つんけんとしたロゼリアからの返事にむっとしたような顔をしたが、今は揉め事を起こすべきでは無いと判断したロバートは静かにサリアから手を離す。

この事が万が一『愛しの彼女(笑)』の耳に入ってしまっては困るからだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る