第45話

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それからというもの、ロバートが毎日のように話しかけて来るようになった。日によっては贈物やら花やらを渡そうとしてくる。当然、全て突っぱねているが。


そしてどうやらラーラも、ロバートがアタックしている相手がシャーロットだとは彼に教えていないようだ。婚約破棄を目論んでいることは、まだユリウス、ロゼリア、サリアを除いては、両家の面々しか知らない。それも王家側はまともに取り合っていないため、実質上公爵家のみの情報だ。


だからラーラはまだシャーロットとロバートがつつがなく婚約関係にあると信じている。その為、万が一シャーロットであるとロバートが知ってしまったが最後、誰にも咎められることなく、逃げも隠れもせず、自分との時とは違い、堂々と愛することができると思っているのだ。

そうすればラーラには勝ち目はない。何とかして気づかせないでおこうと必死だった。

だが、必死になるあまり、最近は余裕がもてていないのだろう。柔らかだった金の髪はどこか艶がなく、化粧で隠してはいるが、目の下にはクマが出来ている。ほんのひと月前の可愛らしさはなりを潜め、どこか禍々しい雰囲気を纏っていた。


ロバートのシャーロットへの執着具合を見ていると、前々からロバートに言われていた、シャーロットと結婚したあとラーラを側室に迎え、シャーロットを失脚させてラーラを王妃の座に付けると言う約束を簡単に反故にされてしまいそうだ。


なんとかまだロバートからの関心は完全には無くなっていないから、側室には迎えてもらえるだろう。

でも、正妃よりも寵愛の薄い側室など塵も同然だ。現王妃とは違って、実家の後ろ盾も、貴族たちからの信頼も厚いシャーロットがロバートの心をも手に入れて、ほんの少しでも気に入らないと言えば簡単に消し去ってしまえるだろう。


とはいえ、彼女にはシャーロットをどうする事も出来ない。彼女がロバートに全くもって気がないことなどほんの少し見ただけでも分かるのだ。牽制する事も出来ない。彼女に出来ることはただその嫉妬と焦りに濁った茶色の瞳で精一杯シャーロットを睨みつけることと、頑張ってロバートの気を引こうとするだけだった。

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