第32話
32
「『隠さず真実だけ』……ですか?」
ユリウスの強調されたワードにシャーロットは疑問を呈した。当然の反応と言えるだろう。
「あぁ。絶対に庇ったりしないで。今の状況がこの国の治安維持部隊に対して僕の護衛から事細かに伝わってしまっている。ほんの少しでも齟齬が出ると後々面倒だからね。」
その説目で三人は納得したようだ。
その上で発せられたシャーロットの言葉にユリウスは思わず吹き出した。
「あぁ、それならば無意味にあの男を庇い立てする必要もありませんね。どうせみんな分かりきっているのに何の茶番か婚約者として一応一度は庇わなくてはいけないとか謎の圧力があつたんですよね……。めんどくさいのなんのって……。あの男はあの男でその間私に協力するとか話を合わせるとかいう努力もせずに好き勝手しますしね。あ、もう婚約者じゃないんですから尻拭いもしなくていいのか。あぁ、なんて楽ちんなんでしょう!」
どこからか高笑いでも聞こえて来そうな程のテンションである。そこからも今までのシャーロットのストレスと苦悩が感じられる。
騒ぎに集まってしまっていた視線も彼女のセリフに完全に同情に切り替わる。
とりあえず残りの三人は深いことを考えるのを辞め、シャーロットを労うことに全神経を使う事に決めた。
その後、治安維持部隊から簡単な事情徴収があったが、ユリウスの録音と彼の護衛からの話である程度話がついたらしく、ロバートが問題を起こしたことは直ちに国王へと伝わるようだ。
今回その場にシャーロットが居たにも関わらず鎮圧と揉み消しに協力しなかった事に不信感を抱かれ、婚約破棄を画策している事が王宮に勘づかれてしまうかもしれない。
今はただ、父親である公爵が出来うる限り早く手続きに必要な情報や証拠の処理及び提出を完了させてくれることを願うばかりだった。
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