第31話

31

だが、シャーロットに窘められるのは我慢がならないようだった。



「お前ごときがこの俺に……っ!」

「ねぇロバート様、もういいでしょ?違うところ行きましょうよぉ〜」


激昂したロバートに間の抜けたような声がかかる。

そちらに目を向けてみると、金髪に茶色の目、ごくごく平凡な見た目の娘だった。だが、どこか素朴な可憐さがある。



「そんなに責めたら可哀想よ?それにぃ、将来は結婚なさるんでしょ?なら仲良くしなくちゃ!ね?」

「あ、ああ、そうだな……。本当にラーラは優しいな……!全く、口うるさいだけのどこかの女にも見習って欲しいものだな。」

「もぉ〜!仲良くしましょうよぉ〜?」

「はっ、お前の顔が見えると不愉快だ!」


そうシャーロットに向かって吐き捨てるなり踵を返して店の外に出ていった……と同時に外から怒号が聞こえてきた。

『離せ!』だとか『俺を誰だと思ってる!』というような内容の声と『はいはい、落ち着こうね〜』や『暴れないでね〜』といったような声も同時に聞こえてきた。

シャーロットが首を傾げていると、隣のユリウスが薄らと笑っている。



「……あの?ユリウス様?」

「あ、あぁ、ごめんごめん。あんまりにもうるさいからさ、ロバートの意識がシャーロット嬢に向いてた隙に巡回してる警備員呼んでもらったんだよね。」


なんか下向いて操作してるな〜とか思っていたらこれのことだったようだ。大人しく居なくなれば見逃そうと思っていたシャーロットとは違い、ユリウスは、はなからロバートを逃すつもりは無かったようだ。


自由気侭に行動しているように見えるユリウスだが、その身分から隠れた護衛が常に付き従っている。

今回はそれが功を奏したようだ。


ユリウスは薄く笑うとシャーロット達に向けてこう言った。



「この後多分事情を聞かれるから『隠さず真実だけを』伝えたらいいよ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る