第26話

26

「私が今まで思っていた以上の糞野郎ですわ…………。」


ロゼリアが呟く。信じられないものを見たような表情をしている。サリアも同様だ。

気持ちはとても分かる。昨日のシャーロットと同じ感想だ。



「でも、残念ですわ……。官僚となってシャーロット様をお支えするのが夢でしたのに……。」

「私も王妃になったシャーロット様のサロンをプロデュースしたかったですわ……。」


しょんぼりする二人に申し訳なく思ってしまう。

しかし二人は直ぐに切り替えたようだ。



「でも、シャーロット様が幸せならそれが一番です!」

「解放されて良かったですわ!ではこれからはフランシア殿下も一緒ですね!よろしくお願い致します。」

「こちらこそよろしく。あぁ、これからは『ユリウス』で良いよ。長いでしょ。」


友人同士だというのに正式な敬称をつけ続けるのは不自然だからだろう。それともロバートへの牽制の意味も含まれているのだろうか。

とはいえ、流石に呼び捨てにするのは気が引ける。



「ありがとうございます。それではこれからは『ユリウス様』とお呼びしますね。」


そう言うと彼はうんうんと満足そうに頷いた。



俄に教室が騒がしくなる。どうやら始業次官が近づいてきたようだ。あれこれ邪推されて騒ぎになる前にユリウスがぱっと防音を解いてしまった。

どうやら数人はこちらの会話が気になってどうにかして聞けないかとあれこれ画策していたようだが、ユリウスが防音を解いたことで聞かれたくない話は終わってしまったのだろうとがっかりしている。

しかしどうやらその場にいる殆どの生徒は全く気にしていなかったようでシャーロットはほっと一安心だ。


一際騒がしくなった入口の方を見遣ると、そこにはロバートがいた。

今日も今日とて大量の取り巻きたちを引き連れてのご入室だ。


だが、彼のことはもうシャーロットには全く関係のないことだ。


早々に彼らから視線を外すと、また友人達との雑談に興じた。


その背中には鋭い視線が突き刺さっていたのだが、シャーロットには知る由もなかった。

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