第27話
27
全ての授業が終わった後、いつもならば実家から寄越されている馬車に乗って家に帰る時間だ。
だが、シャーロットはほんの少しの逡巡の後、思い切って口を開いた。
「……っ、あの、今更かも知れないのですが、この間サリア様が仰っていたカフェに行ってみたくて……その、お二人が大丈夫でしたら、ですが…………。」
シャーロットからのお誘いに目を丸くする彼女らを前に、だんだんと言葉の覇気がなくなっていく。
やはり駄目かとシャーロットが諦めの言葉を口にしようとした時。
「勿論ですわ!楽しみにお待ちしておりましたのよ!」
「今日は確か王城に行かれる日だからてっきり駄目だとばかり……。婚約破棄されるのなら、王妃殿下からのお誘いも無視して大丈夫なのですか?」
「ええ、表向きは王妃教育という名目でしたから。……それより本当に良いんですか?」
「勿論!あぁ、今からもう楽しみですわ!あ、ユリウス様も大丈夫ですか?」
「あぁ、勿論。お邪魔でなければご一緒させて貰えると嬉しい。」
「ユリウス様がいらっしゃる方が安全ですし、シャーロット様の恩人ですもの!邪魔なんてとんでもない!」
とんとん拍子に話は進む。
ユリウスがサリアとロゼリアに受け入れられるかどうか、シャーロット的には少し心配だったのだが、そちらも杞憂に終わりそうだ。
本来ならば今日、この後は再び王城に出向き、散々王妃にこき下ろされる予定だったのだ。
それから解放されたと言うだけで物凄く気が楽になった。
それに、大切な友人達にもう余計な気を使わせる必要も無い。やっぱり昨日全て父にぶちまけてしまって良かった。きっと彼なら何を言われようとも上手く躱してくれるだろう。
――時は少し戻り、王城にて――
公爵は国王と共に執務室で仕事をしていた。
宰相の任を負っている彼は、国王の私的な空間にほど近い場所にある執務室への出入りが許されている。
いつもの通りの表情を浮かべている彼だが、登城する前にシャーロットの婚約破棄に関する書類を纏めて提出してきた為、内心疲労と怒りと達成感が綯い交ぜになった複雑な気持ちであった。
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