第21話

21

「……君たちの婚約に関して、僕は部外者だ。口出しできるような立場に居る訳では無い。そこに責任も利益も生じない。だから好き勝手言うことが出来るわけだが、だからこそ、貴女の心に一番寄り添える回答が出来ると思う。そんな僕から言わせてもらうと、婚約は白紙に戻すべきだと思う。あの男は貴女にとってなんの利益にもならない。家同士のしがらみを気にしているのかもしれない。でも、貴女の御家族はきっと貴女の気持ちを優先してくれるはずだ。貴女の為になるならと本来なら許されないはずの僕の頼みも聞き入れてくださったんだ。貴女の置かれている状況を知れば、きっと味方に着いてくれる。」

「……そうなったら本当に心強いです。……ですが、その分ロバート様に黙って従えと言われたらと思うと怖くて……。」

「大丈夫。客観的な視点が必要なら僕が口添えしよう。それに、万が一の事があれば、僕と一緒にこっちの国に来るかい?……冗談だ、そんな顔しないでくれ。」


ユリウスは、思わず怪訝そうな顔をしたシャーロットに、どこか悲しそうにも、拗ねたようにも見える表情をする。

そんな彼を見ていると、何だか自分が悪くないのにうじうじ悩んでいる自分が馬鹿馬鹿しくなってきた。

両頬を軽くたたき、気合いを入れ直して覚悟を決めたシャーロットは再びユリウスに向き合う。



「殿下のおかげで何だか少し気持ちが楽になりました。この後父に話してみようと思います。……宜しければ同席して頂けませんか?」

「ええ、勿論です。今からですか?」

「はい、そのつもりです。」

「分かりました、では今からここにお父上をお呼びして来ましょう。」


そう告げると、ユリウスはあっという間に部屋を出ていった。先程彼は冗談だと誤魔化してしまったが、きっと私が不気味に思わないようにと彼なりに配慮してくれたのだろう。

自分がこの後、路頭に迷う心配が無いと分かったら何だかこの婚約一つに縛られているのが嫌になって来た。

父に相談して、その後何がしたいのかあまり考えていなかったが、婚約を破棄する方向で考えて見ようか。もちろん、相手の有責で。

そうして解放されたら、今まで縛られていた分まで自由に生きよう。家族が受け入れてくれるならば、将来家を継ぐ兄の補佐もいいかもしれない。きっと今までしてきた血のにじむような努力が役に立つ。


そんな開けた未来を想像して、シャーロットの頬は自然と緩んでいったのだった。

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