第20話

20

深い眠りから覚めると、何やら騒がしい。

どうやら、この喧騒で目が覚めてしまったようだ。

そういえば、今日はユリウスが来るとか言っていたような気がする。

きっともうすぐ来るのだろう。この騒がしさは、彼を迎え入れるための最終チェックのようだ。


シャーロットはベッドの上で上体を起こすと、軽く髪と着ていた衣服を整えた。

見舞いと言っていたようだから、堅苦しいドレスに着替える必要はない。きっとこの場所に彼が来るのだろう。とは言っても、寝起きのままの見苦しい姿を見せる訳にもいかないのだ。


シャーロットがゆっくりと手櫛で軽く髪をととのえていると、部屋のドアがノックされた。「どうぞ」というシャーロットの言葉と共に、使用人に連れられたユリウスが入って来た。

普段なら絶対に男性と二人きりにされる事など有り得ないのだが、気を使った使用人はユリウスがベッドサイドの椅子に座るのを確認すると、部屋を出ていった。



「起きていたんですね。あ、いや、気を遣わせてしまったのかな?」

「いえ……わざわざ御足労頂きありがとうございます。」

「いや、大丈夫だ。その……二人きりで話がしたいとお父上にお願いしたんだ。自分達では貴女の悩みを解決出来ないかもしれないからと逆に頭を下げられてしまったよ。……愛されているんですね。」


シャーロットはユリウスの言葉に目を丸くする。先程感じた違和感は、公爵公認のものだったのだ。確かに、相談するべきか未だに迷っているシャーロットとしてはその気遣いはとてもありがたい。

最初は信じていたかもしれないが、昨日のシャーロットの様子を見れば、きっと見舞いと言うのは建前で、本題はそちらであるということはシャーロットも、その家族も全員が分かっているのだろう。


とは言え、その場を見てしまったとは言っても、部外者であるユリウスからその話を切り出すのは気が引けるのか、視線が定まらず、口を開閉している。

でも、わざわざ家まで来てくれたのだ。彼には話しても大丈夫だろう。



「……フランシア殿下。その、昨日の事なのですが、実はまだ家族に話せていないんです。気を遣わせてしまうかもしれない、とか、私の力不足だと言われたらどうしよう、とか、どうしようもない事だと切り捨てられたらと思うと怖くて……。」


ただでさえも自分がやるはずだった仕事を父である公爵に任せてしまっているのだ。あの優しい顔が嫌悪と呆れに染まる所を想像すると、怖くて仕方がなかった。

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