第19話

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執務室に戻った公爵は、シャーロットから受け取った大量の書類を机の上に積み上げ、渋い顔をしながら、一枚一枚、内容を確認していた。


どれもこれも、読めば読むほど見事に全て、内容は王妃と王太子の仕事内容だ。

確かに王城から帰る度に、王妃から何かを渡され、必死に取り組んでいることは知っていた。

しかしそれは、あけまでも王妃教育をとんでもないスピードで早くに終わらせてしまったシャーロットへの、次期王妃としての追加の課題のようなものだと思っていたのだ。


確かに現王妃は元々身分が低く、教養も十分とは言えない。その為、公爵も全幅の信頼は置いていない。それでも、王妃として、国のために手ずから次代の王妃を教育していると思っていたのだ。


それがまさか、自分の仕事を娘に押し付けていたなんて。彼女はきっと、国のために努力しよう、王妃として国に尽くそうなどという気はさらさら無いのだろう。

頭にあるのは金と権力のことのみ。


しかし、努力をしなければ成長も出来ず、無能なまま。だからこそ、自分の身を守るため、精一杯の力をつけようとした側室達に、実質上の後宮の利権を奪われているようなものなのだ。


一国の王太子となれば、仕事量は相当だ。それは王妃も然り。その二人分の仕事をこなしていたとなれば、倒れてしまったことにも納得だ。

医者の言っていた急激なストレスと言うのも、王家と何か関係があるのかもしれない。


これは早々に問い質さなければならないだろう。

本来ならばすぐにでも王宮に怒鳴りこみたいような気持ちだが、明日はユリウス・フランシア殿下がいらっしゃる。

仕方ないので動くのは明後日以降にしよう。


シャーロットから渡された書類の中には今日が締め切りのものもあったような気がする。

が、公爵は届けようという気はさらさらなかった。

仕事を任せているならせめて自分が取りに来るべきだろう。最低限の誠意も感じられない。


国を、王家を支えるべき立場としては褒められたものでは無いかもしれないが、少しくらい困ればいいのだ。

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