第16話

16

目を開くと、まず目に飛び込んできたのは白。

見慣れた自室の天井の色だ。

状況が飲み込めず、シャーロットは軽く身体を起こして周りを見渡す。

体を動かすと、そばに着いていたメイドが駆け寄ってきてシャーロットを覗き込んだ。



「お嬢様、お目覚めになられたのですね!運び込まれてからかれこれ五時間も気を失ったままだったんですよ!本当に安心しました……。今、お医者様と公爵様たちをお呼びしますね!皆様ご心配なさっておられるのですよ!!」


早口で捲し立てると、未だ状況を飲み込めていないシャーロットを置き去りにしたままパタパタと部屋から走り出ていった。


どうやら自分は気を失っていたらしい。

シャーロットの記憶の最後は、学園の廊下でユリウスと一緒に居たところだ。ロバート達を目撃し、ユリウスと共にその場を立ち去ろうとして………………そこで彼女の記憶は途切れていた。


何とか自分の置かれた状況を理解しようとシャーロットが奮闘していると、バタバタと、今度は大人数の足跡が近づいてくる。


ノックと共に、「お嬢様、失礼致しますね。」という先程のメイドの声が聞こえる。

その声と同時に勢い良く開かれた扉からまずは公爵夫妻、そしてほんの少し遅れて二人の兄がシャーロットの部屋の中に飛び込んできた。



「シャーロット!あぁ、良かった!」

「目を覚ましたのね!本当に安心したわ……!」

「やっぱり体調が良くなかったのか?朝、無理にでも止めれば良かったな。」

「お前が抱き抱えられてうちに運び込まれた時は本当に肝が冷えたよ……。」


怒涛の勢いである。

ただ、いくつか聞き捨てならない様なことが聞こえたような気がするのだが気の所為だろうか?



「お兄様?抱き抱えられたって誰に…………」

「はいは〜い、ちょ〜っと失礼しますよ〜。無事を確認するのは良いんですけどね。一応どこかに不調を来たしていないかどうか検査させて下さいね〜。」


あまりの勢いに押されぎみだったが、ほんの一欠片だけ気を取り直したシャーロットが兄に投げかけた疑問をぶった切って割り込んで来たのは、家族と一緒に部屋に入ってきた医者だった。

彼等と一緒に走ってきたのだろうか?

老齢である彼にはキツかったであろう。

彼の顔に深く刻まれた皺や、頭部の大部分の面積をを占める白髪が増えたようにさえ見えてくる。

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