第15話

15

「こんなことしてていいんですか?もうすぐ婚約者様が来られるのでは?」

「そんな事どうだって良いだろう?」

「まぁ、そんな事だなんて可哀想。」

「事実だ。それに、本当は僕だってあんな身分だけが取り柄の女と結婚したい訳じゃない。父上から命じられたから仕方なくだ。」

「あら、そうなの?それに、陛下からのご命令って事はあの女が権力を盾に次期王妃になったということ?」

「ああ。それにあんな醜い女、抱く気も起きない。ラーラ、僕は本当は君と結婚したいんだ。あの女と結婚して数年子供が出来なければ周りも諦めるだろう?そうしたらあの女を側室に落として君を正妃に迎えよう。それまでの辛抱だよ。とりあえず側室でいてくれるかい?」

「まぁ、私が王妃になれるの?嬉しいわ!」


頭を鈍器で殴られたような感覚が襲う。


くすくす、くすくすと笑い合いながら絡み合う二人の口から紡がれるのはとんでもない内容。


「……は……?……っ」


思わず漏れ出た声に、慌てて自分の口を塞ぐ。覗き見ていることを気付かれたかと中の様子を伺うも、こちらに気付いた様子は無い。今あの二人と目が合ったら自分が惨めで、いたたまれなくなってしまうたろう。

元々ロバートに嫌われていた事なんて分かっていた。それでも、国の為だと言うことを心の支えにして、身を粉にして働いてきたのだ。それを『身分だけが取り柄』?『権力を盾に』?

ふざけている。

それでも、突然の事に何よりもショックが大きかった様で足元がふらついてしまった。


――転ぶ。

だんだん近くなる地面に思わず目を閉じたが、いつまで経っても衝撃は来ない。



「……とりあえず、移動しましょう。」


目を開けると、気遣わしげにこちらを見つめるユリウスと目が合った。どうやらふらついたシャーロットを彼が受け止めたようだ。先程彼がシャーロットを静止したのはこの光景を知っていたからだったのか。慌てて立ち上がり、謝ろうとするが、静止され、人差し指を口元に立てて、静かにするようにと合図をされる。

それに大人しく従い、深深と頭を下げ、ユリウスの後に歩き出そうとしたシャーロットだったが、一歩踏み出そうとした瞬間に膝から崩れ落ちてしまった。


――――――意識が暗転する。

どこか慌てたようなユリウスの顔が見えたような気がした。

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