第13話
13
ルーナに見送られて王宮を出たシャーロットは、自分の馬車に乗り込んだ。中を見ると王妃が言った通り、大量の書類が積み込まれている。前回渡されたものの中で締切が一番遅いものは明日までのものだったはずだ。流石に今晩家に帰ってから処理しなくてはならないものはこの中には無いだろう。
とはいえ、相手はあの王妃。油断は出来ないのだ。またそんな事で難癖を付けられては堪らない。
家に帰ってから今日は書類の仕分けだけでも終わらせてしまおう。
そもそも、王妃から渡される仕事は本来ならばロバートがこなすべき物だ。流石に王宮の外に持ち出し出来ないものは渡してこないが、裏を返せばそれ以外のものは全てシャーロットに処理させるのだ。それも、ロバートの名前で。
時折、王妃が処理すべきものが混ざっている事もある。彼女は幼い頃から王妃教育を受けた訳では無い。学園を卒業してからの付け焼き刃では結局能力が追いつかず、大した事はできないのだ。
『婚約者の務め』『嫁入り後の訓練』などと王妃は言ってのけるが、シャーロットに仕事を任せ切りにしてロバートがしていることと言えば女遊びと豪遊。
それを『忙しい』などと言ってのける彼に、王妃が甘やかすからどんどん付け上がっていく。
そうして殆どの仕事をサボってきた彼は、今となっては自分で、書類の処理ひとつ出来ないのだ。
シャーロットが代わりにこなしているおかげで事なきを得ているが、それは王妃が勝手にやっている事なのだ。そんなこととはつゆ知らず、的確に処理されていく仕事に、ロバートは自分が有能だとさえ思い上がっているのだ。
そうしてシャーロットが仕事をするのが当たり前と思ってしまった王妃は、どんどんシャーロットに丸投げする仕事の量を増やしていく。今日もまた、前回より少し増えているように見受けられる。
王妃教育は完了しているとはいえ、シャーロットは学生だ。一応他の勉強だってある。座学だけでは無い。勘を鈍らせないために、家に帰った後は楽器や声楽、ダンスのような授業だってあるのだ。
馬車の中で揺られながら、シャーロットは今日もきっと大した時間眠れないんだろうな……と遠い目をしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます