第12話

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ルーナの助け舟のおかげで今日はいつもより早く帰れそうだ。だが、こうも思い切り王妃に対して喧嘩を売ったルーナは無事で居られるのだろうか?

いくら強い後ろ盾があったり、国王からの寵愛があっても、王妃が外聞を気にせず排斥しにかかったらいくら彼女でも危ないのでは無いだろうか?

この後シャーロットが退室した後二人きりになって大丈夫なのだろうか?

そんなシャーロットの心配は、次のルーナの言葉で杞憂に終わる。



「ですが、王妃殿下はお疲れの様子。私が言い出した事でお手数をおかけするのは忍びないですし、私がシャーロット様をお見送り致しますわ。」

「は……?」

「さ、シャーロット様。参りましょう?」


彼女は王妃に口を挟ませぬよう素早く畳み掛けると、シャーロットに手を差し出す。

早くしないと王妃から静止の声がかかってしまう。

そうすれば流石にそれを無視することは叶わないので、必然的に離脱は困難になってしまうだろう。

ほんの少し、ルーナの瞳の奥底に焦りの色が滲む。

シャーロットは迷いなく立ち上がると、王妃に向かって礼をした。



「本日はお招き頂きありがとうございました。わたくしはこれにて失礼致します。」


そうして王妃からの返答を待たずにさっと背を向け、歩き出す。

普段なら不敬に当たる態度であろうが、ここは私的な場であり、それを指摘する立場であるはずの王妃は言葉を失ってわなわなと震えている。

しかし、扉に手をかけた二人に、やっとの思いで気を取り直した彼女は、これだけはと言うかのように後ろから大きく声を掛けた。



「シャーロットさん、貴女の馬車に、あなたの分の仕事の書類を届けさせてあります。期日までに処理してロバートに渡しておきなさい!」

「……かしこまりました。それでは失礼致します。」


シャーロットは、まるで捨て台詞の様な王妃の言葉を背中で受けて、軽く答えを返すと、ルーナと共に応接間を出た。



「……シャーロット様の仕事では無いでしょうに……。」


ルーナが気遣わしげに呟くが、どちらにせよシャーロットに拒否権はないのだ。

ことを荒立てない為にも受け入れてしまう方が楽であった。

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