第5話
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全ての授業が終わった後、シャーロットとロゼリア、サリアは帰りの送迎の馬車が来ている正門に向かって並んで歩いていた。
話が一区切り着いたところでサリアが他2人の前に回り込んで向かい合う。
「あの……この前街に新しくオープンしたカフェがあるんです。お二人と一緒に行きたくて、まだ行ってないのですが、宜しければこの後一緒に参りません?評判を聞く限りではとっても良さそうな雰囲気なのですが……。」
サリアは可愛いものや甘いもの、いかにも女の子と言えば!という物が大好きなのだ。趣味はカフェ巡りで、街の美味しいケーキ屋さんや内装が可愛いカフェなどの情報量は、他の誰にも引けを取らない。
新しくオープンするお店があるという情報をどこからか聞きつけると、オープン日が休日であれば開店前、早朝から並び、オープン日が平日であれば、学園に遅刻してでも早朝から並んで必ず一番最初に店に入る程のマニアだ。そんな彼女が勧める店はどれも当たりと言って差し支えなく、満足のいくクオリティのものである。
そんな彼女がオープンしたにも関わらず行っていないなど何があったのだろうかとシャーロットとロゼリアは戦慄する。どこか不安げにそわそわと見上げてくるサリアの姿は、その小柄な可愛さとも相まって思わず抱きしめたくなるような魅力があった。
しかし、シャーロットはそんな誘惑を断腸の思いで断った。今日はどうしても駄目なのだ。
「ごめんなさい、サリア様。その……今日はどうしても王宮に出向かなくてはなりませんの。…………王妃様に呼ばれていて……。せっかく誘って下さったのに、ごめんなさい。宜しければ私抜きでお二人で行ってはいかがですか?」
気が進まない誘いだが、断る訳には行かなかったのだ。ほんの少しも楽いとは思えないその時間は、友人達と過ごすキラキラしていて一分、一秒でも惜しいと思えるものではなく、ただひたすらに苦痛な時間が過ぎ去るのを待つのみだ。
最早今から憂鬱である。
そんなシャーロットの様子を見たサリアは慌てて口を開いた。
「あ、いえ、こちらこそそんな事を知らずに誘ってしまって申し訳ございません。ですが、二人だけで行くなんてことはしませんわ!またご予定が空いた日があったら声をかけてくださいませね!私は何時でも行けますから!」
「そうですわ!私達は三人揃っていてこそですもの!そんな寂しいこと仰らないで?」
ロゼリアもそんなサリアの言葉に続いた。
少し表情が柔らかくなったシャーロットにほっとした二人は、馬車に乗り込んだ彼女を見送ると、顔を見合わせて小さく笑うとそれぞれの馬車に乗り込んだ。
彼女達はシャーロットに楽しんで欲しかったのだから、彼女が居ないのならばわざわざその日に出かける理由は無くなってしまったのだった。
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