第4話

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友人二人をなんとか宥めすかしたあと、教室に辿り着いたシャーロットはその視界に再び婚約者であるロバートを捉えた。

階段状に席が置かれた講堂の様な形をした教室の、一番前のど真ん中に陣取っている。

周りには朝も共に居た取り巻きたちが座っている。

授業だって真面目に聞く訳でもない。教師も顔を顰めるのみで注意しないのをいい事に、教室中の人達の視界に入ってくるその位置に陣取っている神経には脱帽する。あくまでその神経にだけは、だが。


彼の取り巻きの中の数人がこちらを指差しながら嘲笑っているが、シャーロットは無視を決め込んでいる。いくら何を言われようとも、王太子妃になるのは自分で、将来国母となるのもシャーロットなのだ。どれだけ彼女達が頑張った所でシャーロットに勝てるわけではない。気にするだけ無駄だ。


この国には側室制度がある。

現国王も5人程の側室を抱えている。

恋愛結婚であった国王と王妃だが、国王が王妃に惚れ込んだ時の事を考えれば分かる通り、彼は惚れっぽく、冷めやすいのだ。王妃と結婚したはいいが、ロバートが生まれる頃には彼女に飽き、既に下町で他の女に手を出していた。

王位継承権が与えられるのは王妃が産んだ子供だけであることからロバートが時期王である事には変わりないのだが、国王の関心は既にない。


子供を産むつもりもない側室を何人も抱え込み、そのそれぞれが国王からの寵愛をいい事に好き勝手をする。それぞれの天下は短いが、如何せん好き放題贅沢をするものだから王国の国庫は火の車だ。


王妃に据えたのが貧乏子爵家の令嬢だったのも良くなかった。王妃の実家からの支援も得られず、それどころか実家への仕送りをして私服を肥やそうとする始末。


その息子であるロバートにも既にその兆候が見られている。資産面でも後ろ盾としてもシャーロットは必要で、その地位を脅かされる事など天地がひっくり返ってもありはしない。


ただ、この不当な扱いに我慢すれば良いだけだ。


シャーロットはそう考えていた。

貴族女性に多い自己犠牲的な考え方だ。

家の為に嫁がされる事が多く、またその為に生きることが美徳とされる貴族社会において、その考え方は間違えてはいない。


しかし、シャーロットと中の良い二人はあまりの彼女への扱いの酷さに、見ている彼女達の方が辛くなってしまうのだった。

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