第3話

3

「そんな事はありません!私達は貴女の事が大好きなんです!」

「そうですよ!その包容力だってシャーロット様の魅力です!」


二人はシャーロットを慰め続けていた。

傷口に塩を塗り込むような言葉も含まれる気がしないでは無いが、全ては大好きな彼女のため。あんな男のせいで傷ついて欲しくない一心での行動だった。



「彼女達の言う通りです。」


そんな彼女達に突然後ろから声が掛かった。

ロバート達一行が歩いていった方向に鋭い視線を送る彼はサラサラの黒髪に黒曜石のような瞳をもち、ロバートとはまた違ったタイプの美丈夫であった。


彼はユリウス・フランシア。

隣国の王太子であり、両国の交友の為に学園に留学している。美しい容姿をしているが、一匹狼タイプであり、近寄り難い雰囲気を醸し出す彼は、いつも静かに一人で佇んでいた。



「フランシア殿下……!お見苦しい所を……。」

「いや、いい。顔を上げてくれ。それに先程も言ったが君は何一つ悪くないではないか。問題は彼の方にある。それに、そのままの君を私は好ましく思っているよ。何も気にする必要は無い。」


ユリウスの姿を見たシャーロットが慌てて礼を取ろうとするが、彼はやんわりとそれを止める。

そんな彼の態度を見て、思わずサリアとロゼリアがぽそぽそと呟いた。



「……ロバート様にも見習って欲しいですわ。」

「いっそ、シャーロット様のお相手がユリウス様でしたらよろしかったのに……。」


シャーロットは、そんな彼女達の些か正直すぎる感想を軽く窘めつつユリウスに大して一礼し、去っていった。どれほどボンクラであろうとも王太子は王太子。万が一聞かれるとまずいのだ。


ユリウスは、そんな彼女達をじっと見つめながら呟いた。



「……そうだったらどんなに良かった事か……。」


小さなその声は、人通りがまばらになり始めた朝の石畳の道に吸い込まれて誰の耳に入る事も無かった。

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