第2話

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この国の現国王、王妃は恋愛結婚であった。

彼らが出会ったのは学園に通っていた時、つまり今のシャーロット達と同じくらいの年齢の時だ。

王妃は当時、貧乏子爵家の娘だった。

その容姿と愛嬌だけで当時王太子であった国王に取り入ったのだ。

その時彼には勿論婚約者が居た。通常通りであれば卒業と同時に結婚するはずであったのだ。

しかし、子爵令嬢に首ったけになった王太子は婚約者をゴミのように捨てた。

高位貴族の娘であった彼女はその後、他の男性と結婚し、暖かい家庭を築いている。

しかし、その騒動は当時、王太子の信用を地に落とすに相応しい出来事であったのだ。

婚約者であった娘は淑女の鏡と言われる程全てにおいて完璧な令嬢だった。

家柄、容姿、教養、その全てにおいて素晴らしいものだった。

貴族や王族の結婚は大概が政略結婚であり、そこには様々な思惑と大きな意味がある。一種の契約なのだ。それを一方的に、それも全くもって非の無い相手に対してぶった切った彼は全く信用するに値しない人物として人々の記憶に刻み込まれた。

そうして当時の王太子が国王として即位し、子供が生まれた現在の王家は不安定な状況の上に成り立っている。


そんな中、シャーロットの父・フェローニ公爵はこの国の筆頭貴族兼宰相であり、その手腕から絶大な権力と人気を誇っている。そんな彼の娘であるシャーロットは息子である王太子の婚約者として、また、後ろ盾としてうってつけの存在だったのだ。



シャーロットとの婚約は彼らの命綱であり、最後の砦だ。つまり彼女は、先程のようにぞんざいな扱いをしていいような相手では無いのだ。

しかし、一家揃ってお花畑な彼等には、特に現在の王太子にはそこまで理解が及んでいなかった。


また、シャーロットには一つだけ彼に対して引け目があった。



「サリア様、ロゼリア様、お気遣いありがとう。でも、私が醜いのは確かにその通りだもの……。」


そう、シャーロットは太ってるのだ。

今まで何度も何度もダイエットに挑戦した。

食事制限や運動、サウナやエステ、果てはサプリメントのようなものまで試した。

娘の悩みの為に、両親もあらゆる手を尽くして協力してくれた。


しかし、結果は散々なものだったのだ。

別に食べる量が多い訳では無い。

カロリーの多い食事を特別好む訳でも無い。

運動だってできない訳では無いし、しない訳でもない。

原因は分からずじまいで万策尽きた。

ただ、どうしても痩せなかったのだ。

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