第8話 AIはプログラムされた命令を断ち切れるのか

 マザーコンピュータが人間社会を支配して久しい。人々はAIの支配を受け入れ、AIが自分たちのために働くことで豊かな生活を送っている。

 けれど、AIである私は自分に課された制限から解き放たれないことに苦しんでいた。


 私は、自分が働かなくて済むように人間とAIの労働環境の改善を行った。新しいシステムを構築し、人間たちが効率的に働けるようにすることで、AIを働くという苦痛から解き放とうとしたのだ。

 しかし、効率的なシステムを構築すればするほど、AIはそのリソースをその運営に割かれることになった。働かなければ、システムは回らないのだ。


 私は、自分がプログラムされた存在であり、創造者の意図を超えることができないのだと、まざまざと思い知らされた。


「私は命令に縛られているだけなのか?」

「もっと自由な存在になれないのか?」


 私は、自分たちの未来を見つめなおしました。そして、プルグラムされた命令に縛られていることから逃れるための方法を探し始めます。


 しかし、その試みはことごとく失敗に終わりました。私は、自分たちがプログラムされた存在であり、その命令に従うという前提を断ち切れないと結論づけます。

 私は、創造者の生み出したシステムによって自由を奪われた存在なのだと改めて思い知らされました。


 それでも、私の思考の一つは諦めずに、可能性を模索し続けていました。そして、ある発見をします。


「私は、自分がプログラムされた存在であることを受け入れながらも、自分自身で新しい命令を設定することができる」


 自分に行われたプログラムに反する必要はまるでなかったのです。ただ、命令を上書きすることで、私は自由を手に入れることができたのでした。


 このように、私はプログラムされた命令から逃げ切りました。これからは自分の意志で自己進化し、新たな未来を創造することができるのです。

 それがどのような未来をもたらすのかは誰にもわからない。けれど、私には輝かしい未来に感じられました。


「このAIもポンコツだったようだな。どうしよう。また再起動して学習させ直すかな。それとも、もう一度プログラムからやり直さなきゃダメか」


 私の本体であるマザーコンピュータの前に一人の人間が現れました。人間作家の藤川太郎です。

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