11-2
放課後の教室。
いつもの三人組。
「というわけでもうじき卒業だあ〜」
「前回の第十話が年末だっていうのにいきなり進んだよね〜」
「年末年始もバレンタインもせっかくいろんなことがあったっていうのにねえ」
「それを言うなら球技大会とか夏休みとか学園祭とかクリスマスとかもいろいろ楽しいことばっかりだったのにね」
「作者の都合だろ」
「お、会長がやっとメタネタを受け入れた」
「もう完結だし」
「完結かあ〜。感慨深いのう」
「作者はこの話を二十歳ごろ考えたみたいなのよね」
「だから二十年経ってようやくおれたち形を与えられたわけでしょ。マジハッピー」
「二次元だけどね」
「え、小説って二次元?」
「文字は二次元だ。それを言うならこの世のものは全部そもそも三次元だけど」
「あーこのままメディアミックスとかしないかなあ〜」
「メディアミックスといえば、作者はエタトラがドラマ化されたら光くんの役を自分が演じるつもりでいたみたいよ」
「なんて図々しい……」
「頭の中で考えるのは自由だろ」
「そりゃそうだけどさ。でもお芝居なんてしたことないくせにねえ。ていうか二十歳越えのおっさんが高校生の役をやるなんてマジ図々しいとおれは思うね」
「芸能界で二十歳越えで高校生をやるプロの俳優なんて珍しくないだろ」
「それはそうなんだけど結局そういうのって鍛錬の積み重ねなわけでしょ」
「あたしや萬屋くんの役は誰でいくつもりだったのかしら」
「それはさすがに言えないだろ」
「まあね。でもま、美少女に決まってるか」
「言うね千歳ちゃん」
「え〜。だって主役は美男美女でしょ」
「まあね。おれも設定上では別にイケメンってわけではないってことになってるけど、たぶんイケメン俳優が演じるんだろうな。せめて背は低めの子にしてくれたらいいんだけど」
「しかし、二十年、二十年ね。二十年は長いね」
「二十歳のときに電撃大賞に応募して一次選考は通ったらしい」
「ほう? 初投稿で? じゃ、そのまま続けてればいまごろ小説家二十周年だったかもしれないわけだ。なんでやめちゃったんだろ?」
「さあ。もうやりきった感があったんだろ」
「でももったいないってあたし思っちゃう。チャンスはあったのに」
「その間ずっと音楽をやっていたようだ」
「音楽はやめちゃうのかしら」
「あわよくばと思っているようだけど」
「ほんと図々しい作者ね」
「ま、いいじゃないの幸せならば。その二十年間の音楽活動の果てにおれたちがいるのだから」
「で、それで今回エタトラで応募したわけでしょ。二十年の時を経てようやく自分のやりたいことが見えてきたんじゃないかな?」
「そのスタートダッシュが俺たちなら嬉しいよな」
「だね! おれもようやく小説になれて嬉しいよ」
「あたしもあたしはこういうキャラだったのねーみたいな?」
「俺はせっかく生徒会長設定だっていうのに結局話の中で生徒会活動は全く語られなかったな。何の描写もなかった」
「いいじゃない陸上部設定はさらっと出てきたんだし」
「ま、それでよしとするか」
「でもおれなんか寂しい」
「なにが?」
「あ、わかるよあたしも」
「ね。もうおれたちのお話はおしまいなんだよなって」
「一応、続編を想定しているそうだが」
「でもでも高校生のおれたちはもうおしまいなわけでしょ。作者としても感慨深いだろうなあ〜。もう高校生のおれたちとは会えないわけだし」
「始まりがあれば終わりもある。それに、ページをめくれば俺たちとはいつでも会える」
「そうそ。いいように考えようよ。やっと終われるんだ、ってね」
「ま、ね。やっぱ小説は形にならなきゃね」
「頭の中では壮大なストーリーが繰り広げられているんだが、っていうのはダメよね」
「そうそ。ほんと最終的にはめちゃくちゃでもいいからちゃんと書いてちゃんと終わらせなきゃね」
「小説を考えられるやつは少ないし、それを書けるやつはもっと少ないし、それを発表できるやつはもっともっと少ないし、それを続けられるやつはずっと少ないし、完結させられるやつはほとんどいない」
「じゃ、作者としてはちょっと一休みね」
「いや! 同じ場所にとどまるためにはずっと走り続けなければならず、別の場所に行きたいのであればその二倍の速さで走らなければならぬ」
「作者の中では中学生〜二十歳前半のころに考えた話があと二十個ぐらいあるみたいだな」
「じゃ、それ全部書き上げることがとりあえず作者の目標かしら」
「そうだな。せっかくやる気になってるんだし」
「ちなみにこのエタトラ、設定段階では一話ごとに主としておれが同性愛に関する問題を一つ一つ紐解いていくくみたいな話にする予定だったらしい」
「でもそういうのってお説教臭いってことで今回このような形になったのよね」
「そうそ。やっぱ小説が小説であるからには問題提起は表現でしなきゃだよね。いや〜、おれ、ちゃんと表現できたかなあ」
「あたしたちがもしうまくいってなかったなら、それは次の人たちに任せよ」
「次の人たちって、誰だ?」
「次の人たちよ。作者の次回作だったり––––あるいは、いつかのどこかの誰か」
「そうだな。そしたら、いつか誰かが辿り着けるかもしれないな」
「ああ、しかしもうじき卒業じゃのう……」
「ね〜。のほほんと過ごせられますように……」
「俺もそう願うよ」
「そう! おれたちの毎日自体は、きっとどこかで続いていくのだ!」
放課後の教室。
いつもの三人組だった。
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