10-6
「あ」
マンションを出てすぐ和洋と千歳を発見した光は小走りで近づいていった。
「おはよ」
「おはよう光くん!」
「おはよう」
「迎えに来てくれたの?」
二人は顔を見合わせ、うなずいた。
「昨日、帰っちゃったから。大丈夫かなって」
光は胸を張った。
「おれは大丈夫!」
「そっか。ならよかったんだけど」
そして三人は学校へと向かっていく。
和洋も千歳も、いつ、どのタイミングで言うか迷っていた。迷う様子が手に取るようにわかり、その様子を見て、光は、仕方がないな、と、前に出た。
「それで、二人はうまくいってるの?」
え、と、千歳は目を剥いた。
「気づいてたの?」
「まあね〜一年ずっと一緒だったし」
「そっか……」
和洋は答える。
「まだ付き合ってるとかじゃなくて」
「へえ。好き同士なのに交際って複雑ね」
「まあ、いろいろあるんだよ」
「ふうん」
光は立ち止まった。おやと思い二人は振り返る。
光は、ちょっとはにかみながら言った。
「おれはさ、会長のことも、千歳ちゃんのことも好きだからさ。好きな二人が好き合ってるなら、嬉しいって思うよ。ほんとに」
その言葉に偽りはないのだろう、と、二人は思った。
「だから––––よかったね」
「俺は」
和洋が光へと近づく。
「お前のこと、ずっと友達だと思ってるから」
「……」
「あたしも同じく」
「……」
光は満面の笑みを浮かべた。
「おれも!」
三人は笑い合う。
「ところで、坂東くんのことなんだけど。ていうかみんなのことなんだけど」
「ああ、安心して。シメといたから」
「な、なにしたの?」
「ううん。『本人が辛いって言ってるなら辛いのよ』っていうことと、『差別ってすごい難しい問題だから、一言では語れないんだよ』って言っておいた」
「お〜。さすが千歳ちゃん。頼りになるなあ」
「トラブルはあたしにお任せよ」
「これからもよろしくね」
千歳は笑った。
「こちらこそ!」
「俺もいるぞ」
「よろしくね、会長!」
「おう!」
もう以前までの三角関係ではない。
それでも、ずっと三人組でいられたらいいな、そう三人とも思っていた。
EPISODE:10
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