第13話畑から
水面下で企てた“殷討伐計画”も、
勿論、この情報を世間に流した時の反応も考えながら、議論を進ませないといけない為、彼等は日々頭を悩ませていた。
世間では、こうした
そんな生活に思いを馳せながら、自室にある大きな窓から外を眺めていた
「暇よのう……」
と、溜め息混じりに呟いた。
彼の瞳に映る風景といえば、広大な畑だけ。
そこは
他に何かあるとすれば、右側に青々とした針のような葉が繁った、大木が1本あるくらいだ。
そんな彼の姿を傍らで何気なく見つめていた、風の精-
「暇が1番ですよ」
と、少し甲高い声で優しく語りかけるかのような口調で同意した。
「あの雲1つない大空を見て下さい。
心が洗われる程、澄んでいるじゃないですか」
「雲は幾つか所々に浮いておるが?」
「そんな細かい箇所など、見なくてもいいのです。
1
「まぁ、そうだが」
何故なら、
“ふうっ“と自分の気持ちを落ち着かせる為に吐いた息で、彼が何処かへ飛ばされていないか心配になるが、それはその時に謝ればいいだろうと、
しかし、そうなったらそうなったで、やることがないわけではない。
寧ろその逆で、戦の準備等を更に強化するといったことをしなければならなかった。
そして、戦に参加しない女性や子供が出きる仕事も考えないと、
農業の
“本当にすることがない……”と、小さく唸りながら、一人愚痴を零す
“封神の義”関係の資料は、毎月一回桃源郷で行われる定例会義の前までに、前もって別の者達が纏めた資料と、それに対する疑問点や意見書を作成し、持参若しくは送付することになっていた。
その資料を元に、集まった者同士で今後の方向性を明確にする為、議論を行うのである。
更に
そのせいで、仕事も倍以上の量なのである。
それ故、下界で担う
その悩みをどうにかしなくてはと考えを巡らせる
「
と、
”ちょん"という小さな感触に気付いて、
「何だ、
そして、
「軍師の仕事の事であろう?」
と、溜め息混じりに言い当て……
それと同時に、
「はい」
“良くお分かりで”と言いたそうな瞳で返事をした
「
それは、
そして近々、貧困などから逃れようとして、殷を脱出する民も増えているそうです。
このままでは、いずれ
「その危機を見据えたうえで、
今は案ずるより見守っていようではないか」
「……そうですね」
この
それ故に民の信頼がとても厚く、皆彼やその仲間の為なら協力を惜しまないという意見さえ出てくる程だ。
そんな、これからもっと巨大な国へと成長するであろう
しかし、時間が経ってみるにつれ、当時の状況を考えたうえで、
自分が抱える仕事量の中で、軍師の仕事もこなせるのかと疑問に思ったのもこの頃である。
「どうしたものかのう……」
しかし、それが出たところで状況が変わるわけでもなく……
まして、城やこの土地に愛着を持って住んでいる全ての民達が納得いく答えなど浮かぶはずもなかった。
その時である。
それは種蒔きから収穫までの辛い作業も、何処か遠くへ吹き飛んでしまうような笑い声だ。
その人物のケタケタと笑う声に、ふと気付いたことがある。
その声色は、
何気無く遠目から見た顔立ちや髪型等も、誰かに似ているような気がする。
少し間を置いた彼の頭に閃いた人物。
それは自分に似ているかもしれないということである。
何せ、ここからそれなりに離れているのだ。
明るい声の彼が何処まで似ているかまでは、ここからでは当然ながら確認は出来ない。
しかしながら、あの明るい声を聞き続けていると心を惹かれ、《リョボウ》呂望はますます彼に会ってみたくなった。
「
いつの間にか、外へ出ようとしている
「あ、ああ……」
「あの少年に会いたくなった」
と、気持ちを伝えながら歩き出した。
「おぬしはここで待っておれ」
「いいえ、私も」
「万が一、あの者におぬしの姿が見えてしまったら、驚いてしまうであろう?」
“物事には順番があるのだ”と、
カラカラと扉を開く音が
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