第11話訪問者
その
しかし、そんな行動をとっているのに、立ち振舞いが気持ちが落ち着いているところから、彼には何か重大な任務を担っているのだろうと、
お互い向かい合って座っている彼等に、話を進ませるようにと、たまに入る涼風が静かに背中を押しては通りすぎていく。
そんな優しい風に身を任せながら、さり気なく彼の動きを、
その訪問者は、
訪問者-
「この家は……随分と風が通っていますね」
「うむ、風通しが良い方が、仕事も捗るからのう」
“内緒話は出来ぬが……”と、本音を混ぜながら話す
「それでは
と、然り気無くそんな提案をした。
“いかにも話がしたい”という、
それを察した
「それなら……」
ようやく答えが纏まったのか、
「わしに縁がある桃源郷の話でもしようか?」
と、提案した。
そんな彼を見て、含み笑いを浮かべる
「桃源郷……是非!」
やがて
「まず、おぬしは桃源郷と聞いてどんな所だと想像する?」
「桃源郷と聞いて……ですか?」
“そうですね……”顔をしかめて呟いた彼は、小さく唸って思案に沈む。
その表情から彼の性格を察するに、思慮深いタイプなのだろう。
そんな彼だから、きっとどんな時も慎重に行動してくれるに違いないと、
それから暫くして、
「多くの種類の桃が植えてあって、神と人間が唯一出会える場所でしょうか?」
という、真面目な
“矢張そうきたか”と、心の中でニヤリと笑う
彼は得意気な表情を
「実は桃源郷は、紙に出会える場所ではなく、唯一人間が入れる神の領域なのだ」
「神の領域?」
「そうだ、それ故にわしも桃源郷よりも先には足を踏み入れたことなどない」
“特殊な通行証があれば、その先にも行けるが”と、心の中で呟くが、
「たまに桃源郷に迷い混む輩がおってな。
その者達を一度ここにある旅館のような施設に保護して、重要な記憶消してから、下界へ戻しておるのだ」
「そう……なんですか……」
“神の
「凄いであろう?」
と、にこやかに笑って自慢する。
左肩にいる
“恐らく自分に対する文句に違いない"と割り切り、
「だから、桃源郷と呼ばれた光景は覚えているが、具体的な内容は忘れておる故、皆説明したくても出来ぬのだ」
「そうでしたか……
確かに、桃源郷へ行ったと告げている者達に話を聞くと、“桃の花が咲き誇っていた”だの、”天女達が広場で舞いを披露していた”だの、似たり寄ったりな訳が分からぬことばかり話していました」
“これで合点がいきました”と、満面の笑みを浮かべた
「
と、感慨深く頷いた。
「いやいや、たまたま興味があった故、情報を仕入れておいただけだ」
にっこり笑った
この他にも
「……あの、また来ても良いですか?」
暫しの間黙っていた
「今度は
と、真顔で言葉を付け足した。
その刹那、
だが、今まで通り澄ましたまま
「
と、伝える。
心の裏では“してやったり!”という気持ちが強く支配しているのに、
やがて時は経ち、
”運河向いてきた“と張り切り、誰もいない部屋で一人飛び上がるくらい喜びに沸いた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます