新しい如月家族
第37話 3人家族
カチャッ………カタッ。
お昼の如月龍夜家のリビングに、積み木を重ねる音が鳴り響きさくら色の服を着て、に可愛いらしいおしゃぶりを咥える1人の幼児の姿があった。
1本に束ねられた短い灰色の髪は、天に向かってピンと立っており、くりっとした可愛い目、雲1つない青空のような水色の瞳をした女の子。
積み木を重ねて遊んでいるその女の子こそ、俺………如月龍夜と妻の如月柚梪との間に産まれた、如月雪である。
ガシャーーーンッ!!!
「………!」
積み木を重ねていた雪。赤い正方形、黄色の長方形、そして緑色の三角形の3つを積み上げた後、三角形の尖った上に紫色の正方形の積み木を重ねようとした。
しかし、三角形の上に正方形の積み木が乗る訳もなく、頑張って重ねた積み木のタワーは崩れ落ちる。さらに、崩れ落ちた積み木が土台の積み木に当たり結局全て崩れてしまった。
「うっ………うぅぅ~………」
試行錯誤して積み上げた3段の積み木タワーが崩れた事で、雪は涙目になる。
「うぅぅ~………っ」
そして雪は、ポロポロと涙を流しながら、手と足を交互に動かしながらヨチヨチ歩きで廊下へ進む。
雪が廊下を進んでいると、洗濯機を仕掛け終わった妻の柚梪が空っぽになったカゴを持って脱衣室から出てくる。
「うぅぅ~………うっ、うぅぅ」
「雪? どうしたの~? よいしょっ」
ポロポロと泣きながら近寄ってくる雪に対し、柚梪はカゴをおいて雪の両脇に手を入れ、グイッと持ち上げ抱っこする。
雪の背中を優しく撫でながら、ふと視線をリビングへ向けた柚梪は、雪が泣いている理由を即座に把握。
「あぁ~、積み木が崩れちゃったのね。よしよし………」
柚梪は雪を抱っこしたまま、リビングへ向かって崩れた積み木の前で雪を降ろすと、柚梪は2つの積み木を重ねて見せた。
「ほら、積み上がった! 次はこれを乗せてごらん?」
柚梪は赤い正方形の積み木を持って雪に渡すと、床に座っている涙目の雪は、手を伸ばして3段目に正方形の積み木を乗せた。
「おっ! 出来た出来た♪︎ 良かったね~♪︎」
柚梪が軽く拍手して雪を褒めると、雪は目に涙が溜まってはいるものの、泣く事なく再び積み木を持って遊び始めた。
その様子を見た柚梪は、廊下に置きっぱなしのカゴを取りに行くためその場から立ち上がる。カゴを回収した後は、そのカゴをベランダから庭に出て外にまだ干してある洗濯物を取り入れた。
洗濯物を取り入れ、再び脱衣室の洗濯機の前へと移動し、カゴを洗濯機の前へ置いた後、脱衣室から廊下に出てお昼ご飯の支度をするためリビングへ移動しようとしたその時だった。
ガチャリと玄関の扉が開いて、外から俺が家へと入ってくる。
「あっ、龍夜さん♪︎ お帰りなさいっ♪︎」
「おう、ただいま。少し早く帰って来れたよ」
実は今日、土曜日で仕事はお休みの日なのだが………どうしても終わらせなければならない急ぎの仕事が入ったため、午前中だけ出勤していたのだ。
「ちょうど今からお昼を作る所だったんです♪︎」
「そうなのか。それなりに腹も減ってたからタイミングや良しだな」
俺は靴を脱いで柚梪と一緒にリビングへ移動する。
「雪~っ、ただいま~」
「………!」
リビングに入った俺は、積み木で遊ぶ雪に向かってそう言い放つと、瞬時に反応した雪は父親が帰って来た事を認識し、片手に積み木を持った状態で俺に向かって両手を大きく上げて抱っこのポーズを取る。
俺は雪の手前でしゃがんで、必死に抱っこのポーズをしてくる雪の両脇に手を入れ、一気に持ち上げる。
「今日も今日とて可愛いねぇ~♡ お母さん以上に可愛いくなったんじゃないか~?」
「もうっ、龍夜さん!」
プクッと頬を膨らませた柚梪は、目を細めてジィーッと睨んでくる。
「なんだ? やきもち焼いてるのか?」
「焼いてませんっ」
「ふーん、実際は?」
「お餅25個分くらい焼いてますっ」
「素直でよろしい」
プンプンとご立腹な様子の柚梪に、俺は雪に向かって「大きくなったら結婚しよっか」と呟く。当然、雪は何を言っているのか分かっていない。
「ふぇっ!? う、浮気ですかぁ!?」
その呟きを聞いた柚梪は、俺の袖を摘まんで引っ張ると、上目遣いで俺をさらに睨んでくる。
「た、龍夜さんには柚梪と言う立派な妻が居ると言うのに、わ………我が子に結婚を求めるとか………むぐっ!?」
必死になって喋る柚梪に、俺は強引に唇を寄せてキスを交わす。
キスをされた柚梪は、唇を交わしたまま一気に頬をピンク色に染め上げて、唇を離すと右手で口元を覆い隠す。
「きゅ………急にキスなんて、ズルイですよぉ」
「悪い悪い。何だか可愛い過ぎる妻を見ていると勝手に動いてしまってね」
「龍夜さんのバカぁ………」
照れる柚梪にクスッと笑う俺。一方で、俺と柚梪が何をしたいるのか分かっていない雪は、俺に抱っこされながら辺りをキョロキョロと見渡していた。
「柚梪、お腹空いた」
「はいっ………今から作りますので………」
「俺も手伝うぜ。雪、お父さんとお母さんはご飯作るから、ちょっと待っててな」
俺は雪を床に降ろすと、まだほんのりと頬がピンクな柚梪と一緒に、キッチンへ向かった。服着替えてないけど………まあいっか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます