第36話

【学園長・マーリン視点】


 ふう。

 盗賊のアジトが見つかるトラブルはあったが、無事冬休みに入った。

 少しだけ、学園がさみしくなるのう。


 外に出て朝日を浴びる。

 寒くなり雪が降る空気を感じながら魔力を感じる。

 これがいつもの日課だ。


 学園の中に入り、ガランとした食堂で食事を摂る。


「マーリン様!また盗賊の拠点が見つかりました!今度は2拠点同時に見つかり、更に探索を続行中です。同時進行させつつ1拠点に兵が向かいました!しかし手が足りません。残る1拠点の制圧にご協力をお願いします!」


「うむ、何か、いやな予感がするのう……早く動いた方がいいのかもしれん。すぐに向かう」


 ワシは盗賊の拠点に向かった。


 

 拠点は山奥にありはしたが、建物を隠すようには出来ておらず、拠点内には人質などはいないとの事だった。

 ワシが大魔法で拠点を攻撃する事が決まった。


「ブリザードランス!」


 氷で出来た無数の槍が雨のように建物に降り注いだ。


「突撃開始!」


 すぐに兵士が突撃して一気に制圧する。


 ワシは抵抗する敵に魔法弾を放って無力化していった。




「「ご協力に感謝します!」」

「いやいや、いい運動になったわい。では昼食に戻るとするかの」


「「お疲れさまでした!」」




 戻って食堂で食事を摂ると、また兵士がやって来た。


「マーリン様!今度は別の盗賊が民家を襲撃しています!ご協力をお願いします」

「うむ、すぐに行こう」


 ワシは襲撃して来た盗賊を魔法弾で丁寧に1人1人攻撃した。

 疲れるのう。


 盗賊を鎮圧すると、今度は学園に戻るように言われた。

 今度は学園が襲撃を受けているらしい。



 学園に戻ると少ない教師と生徒で盗賊を追い返していた。


「残りはワシが倒すでの!」


 逃げる盗賊に範囲魔法を撃ちこんで大雑把に倒した後、残った盗賊を魔法弾で倒した。


「ふう、さすがに、疲れたわい」


 おかしい。

 何かがおかしい。

 事件が多すぎる。

 

 じゃが、1つ1つの事件には連携を感じない。

 好き勝手に暴れ回るような無計画な動きに見える。


 だが、偶然が重なりすぎている。


「マーリン様!ありがとうございます!」

「うむ、今日の盗賊の動きはおかしいのう」

「はい、事件が多すぎます」


「マーリン様!大変です!逆方向から盗賊が攻めて来ました!」

「ふう、ふう、分かった」


 ワシが現場に向かうと生徒達が戦っていた。

 あれは、リンカフレイフィールド。


「フレイムキャット!」


 炎で出来た2体の大きな猫が盗賊を攻撃する。

 

「リンカ!無理しないで!」

「ふふん!大丈夫よ!」

「フレイムキャットはもう3回目よ!これ以上撃てば倒れるわ!」

「ふふん!私はパワーアップしているのよ!」


「おい!あの女を狙え!もう限界だ!」

「あいつを倒せば炎の猫は消える!」

「背は小さいが上玉だ!持ち帰るぞ!」


「舐めないで!ハイファイア!ファイア!ファイア!ファイア!ファイア!」


「「ぎゃあああああああああ!!」」


 リンカフレイフィールドが膝をついた。


「フレイムキャット!残りを倒しなさい!」


「もう少しでフレイムキャットは消える!構わず女を狙え!絶対に持ち帰って分からせてやる!」


「ハイウインド!」


 ワシは風の大きな刃を飛ばして盗賊を殺した。

 生け捕りにする余裕は無い。


「ウインド!」


 残った敵を倒すと、ワシは地面に座り込んだ。


 リンカフレイフィールドは気を失い、生徒が抱えて連れて行く。


 空が夕焼けに染まり、後一時もすれば夜が始まる。

 冬休みに学園に残った教師と生徒はもう疲れている。

 ここで強大な敵が来れば、守り切れんかもしれん。


 だが、出てくる盗賊を野放しには出来ん。

 消耗戦、明らかに兵法を学び理解した者が後ろにおる。


 必ず、次が来る。

 守り切れんかもしれん。


「学園長!大変です」

「……なんじゃ?」


「125体の5メートル級ゴーレムと、牛型の30メートル級ゴーレムが近づいてきます」


 5メートル級!

 通常は人の背丈と同じゴーレムだが、5メートルは巨人と同じじゃ!


 更に、30メートル級のゴーレムは前代未聞!


 まずい、このままでは、守り切れん。


「「ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!」」


「「ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!」」


 ゴーレムの進撃で地鳴りが発生し、音を立てる。


 赤かった夕焼けは暗くなっていき、夜が更けていく。



 125体のゴーレムが整列して学園の前で止まった。

 ゴーレムはメイスを両手に持っていた。


 そしてその後ろには巨大な牛のゴーレムが異様に大きな角をつけている。


 ワシの直感が告げる。


 勝てない。

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