第31話
ファイアストーム家と豚男爵の対決は全国に宣伝された。
そして何故か俺も参加する事になった。
「俺?俺関係あるのか?どういうこと?」
「私もフィール君の妻として呼ばれたよ。結婚式はまだなのに」
同じ馬車にはリンカも乗っている。
「フィール、新聞を読みなさいよ」
「何か書いてあるのか?」
俺は新聞を読み始めると止まらなくなった。
「……」
「なになに?何が書いてあるの?」
「うん、ブタ伯爵が男爵に落とされた経緯が丁寧に書いてある。リンカを不正な借金で手に入れようとしたり、領地にいる掃除の娘を家族を殺すと言って脅して監禁したり、豚男爵の兵士が盗賊だったり、その盗賊が近くの領地を襲ったり滅茶苦茶やってる。もう少し読んでみるな」
「待ってるよ~」
「……豚公爵の兵士が女を攫ったり、積み荷を奪ったり、王家に運ぶはずの積み荷も奪われている。それと豚男爵は領地にある食料すら奪っている。リンカの領地を含む豚男爵に隣接する領主全員に嫌われている。王家は丁寧に証拠を集めているらしい。もう言い逃れが出来ない状態か。妖精に豚男爵を見せて邪悪かどうかを判断する、その為に俺が呼ばれたか」
「そういう事」
「一言で済むなら言ってくれても良かったんじゃないか」
「うるさいわよ」
「リンカ、気持ちは分かるよ。フィールと仲良くしたいけどどうしたらいいか分からないからその感情を隠したいがあまりについつい冷たく言ってしまうんだよね。本当は人を助けたい愛を持っているのにもったいないよ」
「うるさいのよ!このバカ妖精!」
「そうやって恥ずかしくて素直になれない感情は捨てよう。本当はアイラみたいにフィールの隣に座りたいのに出来なくて対面に座ってしまうその処女要素はとても魅力的ではあるよ。でも」
「黙りなさいよ!」
チンカウバインとリンカは相性が悪い。
リンカの顔が真っ赤で可愛いけど、言わないでおこう。
最初、リンカはプライドが高い嫌な奴だと思っていたけど違った。
……ツンデレかと思っていたけどそれもまた違う気がする。
確かにプライドが高い所もある。
でも、パパを守る為に普通なら逃げる所で逃げずに苦しくなっている所や俺に体を差し出そうとしたことを考えると、本当はいい子キャラなんだよなあ。
まじめだし困っている事を言えば『しょうがないわねえ』とか言っているけど嬉しそうに助けてくれて、見返りは求めない。
ちょっとしたコツさえ掴めばとてもやりやすい。
怒る時は今みたいに純粋すぎて恥ずかしいのを隠そうとして怒ってしまう事が多い。
チンカウバインは目に見える地雷を踏んで気にしない所がある。
横を見るとアイラが俺の顔を見ていた。
お互いに見つめ合う。
「……私も見てね」
「……分かっている」
アイラは俺の唇にキスをした。
「うん、あうん、あふん、うん、くちゅ」
俺とアイラは長すいキスをした。
アイラは、意外と性に対して情熱的だ。
キスが終わるとリンカは両手で自分の目を隠すが、隙間から見ていた。
お茶目な所もある。
「そう言えば、最近フィールは2人とご無沙汰なようだね」
「どういう意味のご無沙汰だよ!」
「言っていいのかい?」
「いや、分かるからいいです。それにリンカとはシテいないだろ」
「え?なんの事よ」
「俺とアイラのキスのその先の事だ」
リンカが真っ赤になった。
アイラは俺の腕に手を絡ませた。
俺がリンカを見るとアイラが積極的になる気がする。
「いつラブハウスを使うのかな?私はずっとチャンスを待っていたのに」
「あれだ、恋愛相談も大事だろ」
「学園は大分いい空気になってきたね。紳士や淑女の男女の遠慮はやめた方がいいと思うんだけどみんな中々分かってくれないんだよ。リンカはフィールといつスルのかな?」
「うるさいのよ!!」
「リンカ、チンカウバインは何を言っても変わらない。チンカウバイン、憑依して静かにしていてくれ王都に着いたら人がいっぱいいる。たくさん繋がるのがあるから」
チンカウバインは俺にキスをして憑依した。
「リンカ、妖精と人は違うから何を言っても無駄だ」
「そうね。私もそう思うわ」
「リンカは王都に来たことがあるのか?」
「パパに連れられて数回だけね。有名な通りだけなら案内出来るわよ」
「うん。もし、お互いに余裕があれば案内してもらってもいいか?」
「私も行くよ!」
「ふふん、しょうがないわね。時間が合えば行きましょう。連れて行ってあげるわ」
「こうして話をしていると楽しいな」
リンカが馬車の窓を開けるとアイラとリンカの髪がなびいた。
その姿は芸術に出てくる絵画のようでとてもきれいだ。
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