第32話

 王都に着くと即、コロシアムに案内された。

 ここで豚男爵とファイアストーム家の戦いが始まる。


 俺達が到着するとすぐにコロシアムでの試合が当日に開催される事になった。


 豚公爵は1000人近い兵士で戦う。

 対してファイアストーム家は家の者だけで戦う。

 ファイアストーム家は当主であるパパとリンカだけしかいないので2人だけで戦う事になるだろう。

 そうルールに決まっている。


 ただし、ファイアストーム家の誰かが死んだり犯された場合豚男爵の負けとなり、豚公爵陣営はいくら死んでもいい。

 このルールは盗賊崩れの兵士を殺して始末しておきたい思惑が見える。


 更に豚男爵が負ければ死刑確定だが、ファイアストーム家は負けてもペナルティは一切ない。


 観客席で王が始まりの宣言をするが終わり際に俺が巻き込まれた。


「所で、妖精と契約したフィール、前へ!」


 俺はリングに出る。


「豚男爵、ブッヒ・シュヴァインは妖精チンカウバインはどう見る?邪悪か、善良かを知りたいのだ」

「チンカウバイン、言ってくれ」


「「彼は邪悪だね」」


 チンカウバインは風魔法で声を増幅してコロシアム全体に響かせた。

 俺はすっと観客席に戻る。

 王は俺ではなく、チンカウバインに用があるのだ。

 俺の役目は無い。


「やっぱり!」

「悪い顔をしてるもん」

「悪人顔だな」


「豚男爵死ね!」

「早く死ねえええええ!」

「ファイアストーム家!頼んだぞ!」


 観客が盛り上がる。

 王は数分待った。



「では次に聞きたい。今リングにいる豚男爵の兵に善人はいるか?」

「「ファイアストーム家以外だと、15人程度かな」


「うむ、その者はリングの外へ、戦いを免除する」


 敵の15人がリングを出た。

 やっぱり、盗賊を皆殺しにする気だ。


「次に聞きたいのはリンカフレイフィールド・ファイアストームに対してだ。この闘いにはファイアストーム家の陣営は2人となっているな?」

「はい!その通りです!」


「リンカフレイフィールドと結婚予定の者がいればファイアストーム家の陣営として考えて良いと思っている。リンカフレイフィールドは妖精契約者のフィール・バイブレーションと仲がいいと聞いている。そこで質問の本題だ。リンカフレイフィールド、フィールを男として、夫にすると考えていいか?」


「い、いえ!迷惑はかけられません!」

「そうではない!好きかどうかを聞いているのだ!その心を告白するのだ!リンカフレイフィールドがフィールを好きだと言えば最後に決めるのはフィールだ」


 リンカが真っ赤だ。


 その瞬間にチンカウバインが空中を飛び回った。


「「言うんだ!今すぐ好きと言えばいいんだ!君のその心をただ伝えるだけでいい!学園のみんなは君の心を分かっている!もう隠しても無駄なんだ!」」


 チンカウバインがエナジードリンクを飲んだ後のように活性化した。


「もし嘘をついても妖精はお見通しだ。迷惑をかけないなどとそういう話は隅において本心を答えるのだ!」


「そ、それは」

「答えるのだ!」

「「言うんだ!」」


「「告白!告白告白!告白!告白!告白!告白!告白!!」」


 会場からも声が上がった。


 これは、公開処刑だ。

 俺は、またリングに上がっていた。


 注目するリンカの前に立った。


「やめてくれ!だが俺から言えることはある!俺は」


 風魔法を使った。


「「俺はリンカの事が好きだ!リンカがどう思っているかは知らない!でもこの闘いに参加させてくれ!俺は!俺はリンカが好きだから!!!」」


「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」


 会場が盛り上がった。


 リンカを守る為に俺はやけになった。

 リンカは前に立つ俺の服を掴んで下を向いた。


「「リンカ!すまない!俺は強引にでもリンカを助けたい!リンカが嫌がってもリンカを助けたい!!」」


 そう言ってリンカに向き合った。

 リンカの唇を奪うようにキスをした。


 全部俺が強引にやった事だ。

 リンカは悪くない。


「んんんんん!、あふん!」


 リンカを押さえつけて、強引に舌を入れた。


「&%$)#&%$」


「うむ!そこまでされては一緒に戦ってもらうしかあるまい!」


 観客席で観戦する豚男爵が怒り出した。


「フィールうううううううううううううううううううううううううう!貴様ああああああああああああああああああああああああ!それはワシの物だああああああああああああ」


「あああああ!やっぱり!まだ学園に通っている子を強引に手に入れようとしてたんだわ!」

「新聞に書いてあったことは本当だったんだ!」

「豚男爵気持ち悪い!」

「豚男爵死ね!」

「ブタは死ね!」


 豚男爵に物が投げられる。


 豚男爵は頭をガードしながら射殺すような目で俺を睨む。


「ちょ!調子に乗るな!こっちは1000人近い!だがお前たちはたった3人だ!」


「審判、進行してくれ!」


 王の命で審判が声をあげる。


「ブッヒ男爵率いる928名とファイアストーム家3名、戦いの用意を始めろ!ドラが鳴った瞬間に戦いを開始する。


ゴオン!ゴオン!ゴオン!ゴオン!ゴオン!ゴオン!ゴオン!ゴオン!ゴオン!ゴオン!


 俺達3人対928人の戦いが始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る