第29話
【豚伯爵視点】
「ブッヒ様！領民が領地を逃げ出しつつあります！」
「ふん、ワシを裏切るような者は放置で構わん！」
「そ、そう言う問題ではありません！このままでは税の徴収が出来なくなるのです！領地が潰れてしまいます！」
「それを何とかするのが執事の役目だ！」
「ですが、すでに領民は全盛期の半分を下回りました。前回ブッヒ様が税を上げた事で更に領民が逃げ出しているのです！これ以上税を上げれば民が飢えて死ぬのです！」
「お前はいつも問題を言ってばかりだ。解決策はないのか？」
「解決策はまず1つとして質素倹約、2つ目が税を安くすること、3つ目が民が豊かに生きられるよう地道な内政を推し進める事でしょう」
「ならお前がやれ」
「では、初めに今囲っている女性を解放しましょう」
「ふん、丁度飽きてきたところだ。返してこい」
「承知しました。それと、手紙が来ております。領主の役目としてお読みください。内政を進めるのです」
「うむ、読んでやる」
「では、私は女性を解放して」
「待て、見ろ！10憶の金が返って来た！質素倹約など必要ないではないか」
「10憶、それはファイアストーム家の借金返済でしょう」
「何だと！」
ワシは手紙をちゃんと読んだ。
確かにそう書いてある。
「リンカフレイフィールドを手に入れる計画はどうするのだ！」
「借金を返された以上、もう諦めましょう。気持ちを入れ替えて、内政を行うのです」
「あの娘が手に入らないだと！馬鹿な！ありえない！ワシは1年以上準備してきた！あの女を落とす日を夢見てきたのだ」
「今までが幸運だったのです。たまたまファイアストーム家領主の妻が病に倒れ、大量の薬を必要としました。その後は実費で領主自らが遠征に赴く命を与えられました。しかし、ファイアストーム家の遠征はもう終わりました。これから領地の立て直しが行われるでしょう」
「いっそのこと、攫ってしまえば」
「いけません！あの領主を敵に回しては危険です！」
「あのいつもへらへらした子爵如きに何が出来るというのだ？」
「いけません！ファイアストーム家を敵に回してはいけないのです！娘が攫われたと知った領主はこの地を更地に変える力を」
ワシはやかましく喚き続ける執事を殴った。
「ぐ、どうか」
また殴った。
「どうか話を」
また殴ってやった。
これで大抵おとなしくなる。
この執事はやかましい。
もういらん。
「出ていけ！お前はもういらん！」
「分かりました。では、不要となった女性を帰したのち、お暇を頂きます」
「くどい！出ていけ！」
こうして豚伯爵は優秀な執事を失った。
【執事視点】
私は屋敷から4人の女性を連れ出そうとした。
だが、私が近づいた瞬間に女性は身をすくめた。
「ひい！もう許して下さい！許して下さい！許して下さい！許して下さい！許して下さい！許して下さい！許して下さい！」
私は少し離れて、ゆっくりと話を始める。
「大丈夫です。今から、家に、帰る事が出来ます」
「帰れるの？」
「はい、帰る事が出来ます。私が送ります」
女性は泣き出した。
2人目の女性からは女性に話をして貰い、無事に4人の女性を屋敷から連れ出した。
娘の家族は、私を許さないだろう。
殴り殺されるかもしれない。
私はもう、若くはない。
それでも、いい。
1人を家に送ると、家族は娘を抱いた。
そして、娘の父親が私に近づく。
私は両腕を後ろに組んで目をつぶった。
「別にあんたを殴ろうとは思っていない。守ってくれようとしていた事も知っている。娘が戻って麦の収穫も終わった。領地を出ようと思うんだが、あんたも来るかい？」
「いいの、ですか？」
「ああ、行先は辺境のバイブレーション家だが、いいかい？」
「ええ、ですが、まだ3家族が残っています。私を殴り殺そうとする親もいるでしょう。その時は、それでいいと思っています」
「大丈夫だ。豚伯爵の様子は領民に筒抜けであんたは悪くない。あんたは殴られない。長い旅になる。行こう」
私はその言葉で涙を流した。
この動きが致命的となり豚伯爵はの領地は多大なダメージを受けた。
次はざまあ回
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