第19話

何故こんな言葉を発したのか解らない。言葉を発した後に自分は何を言っているのだと急に冷静になった。厚かましいにも程があるし、この短時間で僕の秘密を共有して仲良くなったつもりなのだろうか?そこら辺のカモにされている客と同じ思考だ。

こんな初対面の訳の分からない男を快く受け入れてくれるのはこの店でお金が発生しているからだ。それ以外何もない。

「うーん。今日は部屋汚いから、帰って掃除しとくね、だから明日からだったらいいよ」

予想外の反応が返って来た。

「えっ?本間に言うてるん?さっき会ったばっかりの変なこと奴やぞ?」

言い出した本人が戸惑いだした。

「話してて本間に悪い人では無さそやし、困ってるんやったらええよ」

拍子抜けした。本当にこの子は変わっている?今まで出会ったことのないタイプの人間だった。

「本間はあかんのやけど、私の携帯教えてあげる」

そう言って紙ナプキンにおもむろに電話番号を書いて渡して来た。

「明日私休みやから、慧悟仕事終わったら電話して、なんか食べに行ってそれから家行こう」

「は、はいそうします」

「なんで敬語なんよ、でも今日は頑張って道で寝てね。また明日ね」

店を出てぽかんとした。携帯を見ると4時前くらいであの時の興奮も冷め少し眠たくなっていた。

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