第2話

 今日も早く目が覚めた。4時くらいだっただろうか、3日くらいでこの生活に慣れる訳もなく、甘く考えていた自分がいかに安全な場所で育ち守られてきた過保護だったのだなと実感した。

 こんな底辺の生活を送っているが、僕は道で寝ているだけで、ちゃんと職を持っているそのために重たい体を引きづりながら大阪駅に向かい、始発の環状線に乗り弁天町に向かう。

 無心で体を引きづりながら駅へ向かう路地の途中で大きな笑い声がした、朝からうるさいなと思ったがもうそんなこともどうでもよかったのかもしれない。


全面ガラス張りでオシャレなお店だった、少しだけお店の中を覗くと定員らしき大柄なメガネの男と、客が談笑していた。

何がそんなに楽しいのだろうと店の中をもっと覗く形になった。大柄なメガネの男に声をかけられた。

「お兄さん、今から仕事?一杯飲んでいきや」

「お前今から仕事の人に酒飲ますなや」

2人は大分酔っ払っているようだった。僕は無言で会釈をして、駅に向かった。


駅に着いてしばらく待つと、始発の電車が来る、この3日間で良かったと感じたことは始発という今から社会が回り出すという1番最初の電車に乗れるという事くらいだった。

大阪駅が始まりではないのでちらほらと乗客が乗っている。

忙しそうに携帯や手帳を確認しているサラリーマン、これから現場に向かうであろう建築作業員のような服を着ている人。

この人達は僕のことなど見てもいないしどうでもいい、小汚い若者が乗ってきて自分の近くに座らないで欲しいと思っているくらいだろう。

いつも僕は扉の前に立ちずっと外を見ていた。

まだ薄暗く、社会は動き出していないそんな朝を走っていく電車の車窓から眺めていた。

しかし感情は悲観的でこの車両に乗っている人達と同様に僕もぼくのことがどうでも良くなっていた。

完全に自暴自棄になっていた。


 弁天町に着くと職場は駅と直結している。

1階の社員用の入り口から入り、長い階段を登るとそこが僕の働く美容室がある。

これから普通の人間になるための準備をしていく。


 道で眠っていて1番困ることが、入浴と洗濯、後はトイレの確保だ、トイレは眠っている辺りのコンビニで済ますことができた。

幸い店には洗濯機、乾燥機、シャンプー台があった。

洗濯を回しその間に頭と体を洗う、体を洗うときは床がびしゃびしゃになるのでタオルを沢山敷いた。

ボディーソープはないので、とりあえずいい匂いの、シャンプーで体も洗っている。肌が強くて良かったと感謝する。

 もしこの朝一の美容室で全裸で体を洗っている男を僕が発見したら、間違いなく警察に通報する。完全に異常者でおかしな性癖を持っていると話す前に確信するだろう。

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