緊急入院 11 免疫グロブリン療法

 皮膚科受診も終わり、昼食となる。朝に申し出た通り、食事形態がムース食から刻み食へと変わって出てきた。


 刻み食とは、いわゆるおかずがみじん切りになっている状態です。それでもムース食とは雲泥の差で、ちゃんと食事をしていると思える最低限の形態ですかね。


 また途中で口が動かなくなるんじゃないかという恐怖感に苛まれながらも、恐る恐るゆっくり食べ進めた気がする。そして、食べている途中で少しずつ身体の変化に気づき始めた。


  "あれ? なんか、割と普通に食える?"


 今までなら、休み休み食べてなんとか食べ終えていた食事を、休憩なしで食べることができた。といっても、みじん切りのおかずをお粥に混ぜて流し込むような食べ方だったけれど。


 気軽に外食に行く。誰かとご飯を食べに行く。コンビニで食べ物を買って、さっと食事を済ます。

 そんな当たり前のことを、この頃の自分はもう諦めていた。一生、自宅でハサミを使ってオカズを細かく刻んで食べて行くんだと思っていた。


 だからこそ、負担なく食事を終えられたことはとてつもなく嬉しかった。希望が見えるというのは、闘病する上でとても大事なことですね。




 そして、午後になり三回目のステロイドパルスを行い、大きな変わりなく一日を終える。


 夜も相変わらず深くは眠れはなかったけれど、一睡も出来ないなんてことはなくなっていた。あれ?今寝てたよな?って程度には、睡眠がとれるようになってきた。環境の変化にも慣れてきたのかもしれない。



 そして、次の日の朝。先生の回診。


「おはようございます。今日から免疫グロブリンやっていきますね。あと、明日外科の予約とりましたんで」


「えっと……外科ですか?」


「胸腺腫の手術の説明を受けてもらうので。勿論、手術日程とかは症状次第なのでまだ決められませんが。お身体の調子はどうですか?」


「形態変わっても、問題なく食べれてます。前より口動くようになってる気が……」


「それは良かった。順調に回復すれば、二週間後くらいで手術に持ち込みたいと思ってるので。とりあえず、悪化はないので血漿交換もやらなくて済みそうですね」


 え、血漿交換やらなくてええの? とりあえず、順調なのか? 普通に嬉しい。

 にしても、いよいよ手術かあ。全然覚悟決まらんなあ。でも、嫌なことは早く済ましたいしなあ。でも、やだなあ……


 そんな感じで思考はグルグルしていた時期でした。メンタルは常にフワフワしていて、上がり下がりが多かった気がします。


 モヤモヤしてる内に、先生は隣のベッドの回診へ。朝の回診は列車のように流れていく。


 

 そして、昼食。この頃はもう、割と食事が楽しみだった。お粥とみじん切り薄味オカズでも、負担なく食べられるだけでめちゃくちゃ美味しく感じるのです。ただ、問題が一つ。


「あー、血糖値高めですねえ。インスリン打ちますねー」


 ステロイドパルスを始めて、しばしば規定以上の血糖値になってしまっていて、インスリン注射をすることがあった。

 血糖測定の針もインスリン注射も全然慣れず、あの地味な痛みが苦手でした。食事前の憂鬱です。



 そして、一発目の免疫グロブリン療法の開始となる。まあ、ステロイドパルスと同じように点滴で行われるわけなんで、やるにあたって大きな変わりはないです。ないんだけど……


「はい、お疲れ様でしたー。一回目、終了となります。お身体の変化ないですかー?」


「大丈夫だと思います」


「それは良かったですー。何かおかしかったら言ってくださいねー」


なんだ。ちょっと身構えてたけど、免疫グロブリンも別に普通の点滴だなあ……とか思いつつ、余裕ぶっこいていた。


 そして、その二時間後ほど。

 身体にガッツリ、副作用が起きる。




 あったま、いてえええええええええ!!!!

 

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