緊急入院③ 二月下旬 救急車にて
「ルートとりますね。点滴入れますんで」
さっきの金髪混じりの可愛い看護師さんが手際良く点滴を繋いでくれる。
「これ何かのお薬ですか?」
「水分みたいなものですよー、心配しないで大丈夫ですからねー」
声が優しい。可愛い。好き。
身体弱ると優しい看護師さんみんな好き状態に陥ります。
ちなみに、この頃が体重低下のピークで五キロほど落ちてました。冷静に考えると一か月近くでこんだけ落ちるってヤバいですよね。それくらいご飯食べられてなかったのです。
あと人生で初めて点滴というものをしました。今でこそ"あー、はいはい。点滴ね "って感じですが、この頃は本当に苦痛でしたね。
常に自分の身体に針が刺さってるって、狂気の沙汰じゃないですか?
「〇〇病院から返事がきて、入院大丈夫みたい。ご家族様到着次第出発しましょう」
「あ、わかりました。今向かってくれてるので、もう着くみたいです」
「あ、僕も一緒に乗ってこーかな」
「え? あ、はい。ありがとうございます」
なぜか担当医も救急車同乗。
あちらに状態等引き継ぎのためなのか、急変時対応の為なのかは知らんが、若干ウキウキしてた。なんだかようわからん。
そんなこんなしてると、親到着。
割とサバサバしている親なので淡々と説明を聞いていたけど、内心めちゃくちゃ心配してたと思う。
それ以降の対応も含めて、色々と迷惑をかけました。申し訳ねえ限りだぜ。
「準備できたので行きましょう」
ということで、人生初の救急車は普通に歩いて搭乗。全くの緊迫感なし。なんか思ってたのと違う。
いわゆる、転院搬送というものらしく救急搬送とはまた違ったものらしい。
中にはストレッチャーがあるのだけれど、そこに座っていようとしたら「いや、一応寝てた方がいいよ」と担当医に言われ横になる。
救急隊への説明は担当医がしてくれていたので、特にすることがなく暇だった。自分に繋がれたモニターの数値とかをぼーっと見てた気がする。
そのまま40分ほど揺られながらサイレンを鳴らしての移動。思ったより振動が強くて荒いので、軽く気持ち悪くなった。酔いやすい人とか苦痛だろうな。
「着きましたよー」
ストレッチャーに寝たまま救急車から降ろされ、運ばれる。急に重病人になったようで、なんか無性にドキドキした。
そのまま救急受け入れの処置室へ。中はバタバタしていて、モニターやら色んな人の声が響いている。
場違い感を感じつつ寝ていると、看護師さんが来た。
「大丈夫ですかー? 今どこが一番ツラいですなー?」
「今は……まあ、別にどこも大丈夫です」
「……え? 大丈夫なんですか?」
なんか、"大丈夫なのに、なんで救急車乗って来たんだよ"的な顔をされた。
いや、大丈夫じゃないんだけど大丈夫なんだよ。説明難しいな。身体動いちゃうし。
「えっと、ここじゃないと治療受けられないらしくて。入院で来たんですけど」
「 ……? 今は痛くはないんですか?」
「いや、痛いとかじゃなくて。身体がダルかったり、ご飯食べれなかったり。苦しい時もあって……重症筋無力って病気で」
「……? 今は大丈夫なんですね。バイタルとりますー」
なんか、話し通じねえな。ある程度引き継ぎされてから来てくれないかな。
バイタル測定やら、コロナの検査をされつつまたしばらく寝たまま待っていた。
暇すぎて、病院の天井を撮影して"知らない天井だ……"ネタをTwitterに投稿してたら、看護師さんにメッチャ見られた。
しばらくすると、白衣を着た先生が来た。
「どうも、はじめまして。脳神経内科の〇〇です。身体の状態はどうですか?」
なんかフワフワした感じの眉毛が濃い人だった。入院中は別の先生だったけど、今はこの人が担当医です。丁寧でいい先生です。
ちなみに、救急車同乗してた以前の担当医はいつの間にかいなくなってました。普通に帰ったみたいです。
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