緊急入院② 二月下旬 救急車へ

「はい、どうも。調子はどうですか」


 診察室に入ると、脳神経内科の担当医がいた。あんまこの人に診てほしくないんだけどなあ……とか思いつつも、そんなこと言えるはずもなく。


「……全体的に体調良くなくて、仕事も休んでて」

「うん。前に比べて全然声出てないね。構音障害起きてる。ご飯は?」

「そういえば、昨日ほとんど食べてないかもです。今日はウィダーインゼリーちょっと飲みました」

「身体はどう?」

「シャワーとかドライヤーとかかけるのもしんどくて。身体は動くけど、仕事とかはとても出来なさそうな感じで。昨日は咳とかもうまく出来なくて……」

「そっか、うん。入院しましょう」


 きた。いや、まあそうなるとは思ってたんだけど。あっさり、入院の方向になったな。

 とりあえず、一回家帰って入院に必要なものまとめて……しんどいけど、掃除も軽くしとこう。あ、洗濯物も……


「このまま入院になります。ご家族に連絡とれる?」

「……え? 一回家帰って、準備してとかは……」

「このまま、入院ね。プレドニン15mm飲んでるのに症状の進行が早いんだよね。危ないから、家に帰す訳にはいかないかな。若いと一気に悪化して人口呼吸器とかになることもあるからさ。嫌でしょ?」

「……嫌ですね」


 このまま入院かよ。だったら、もっとちゃんと準備してくりゃよかった。

 とか思いつつも、心のどこかではホッとしていた。家で一人の状態で悪化して、そのまま最悪の結果を迎えるなんてことも、頭の中にはずっとチラついていた。


 しっかり、医療機関に診てもらえる状況になったことで、心の重荷が降りた気がした。


「とりあえず、色々説明します。確実に身体の方に症状が起きてきているので、眼筋型ではなく全身型となります。あと、これ前回のCTね。なんで撮ってもらったかというと、この病気の場合胸腺腫という病気が合併することがあります。それを診るために撮ったんだけど、あなたの場合ありました」

「あ……はい」


 あるとは思ってたけど、本当にあったよ。


 ……ただ、三年前くらいから仰向けで寝ると息苦しい感じがすることがあった。

 呼吸器内科にかかった時は「季節や気候で気管が狭くなったりするから、その類かなあ」とかなんとも微妙な診断され、薬をもらいそこそこ良くなったりしていた。


 それ以上ひどくなることもなかったので、気にしてなかったのだけれど、今考えると胸腺腫の症状だったのかもしれない。わからんけどね


「まず、この胸腺腫ね。すぐにとはいかないけど、早いうちに手術でとった方がいいです。ただ、手術するには重症筋無力の症状をまずは改善させなきゃいけないのね。症状が出ている状態で手術すると、更に病状が悪化することがあるから」

「わかりました……とりあえず、このまま入院して治療ですね」

「そうなんだけど、血漿交換っていう治療方法と胸腺腫の手術、ウチじゃ出来ないんだよね」


 出来ないのかーい。ってなると、別の病院か。……どこ行くんだろ。


「今から、〇〇病院の脳神経の先生にこれから入院出来るか聞いてみるから。もし、ベット空いてなかったら、とりあえずウチに入院してもらって、あっちが空いたら転院って形にしようかな」


 〇〇病院か。絶妙に遠いな。車で結構かかるがな……。

(結局、そこがかかりつけになります。現在、往復二時間以上かけて通院してるよ! 有料道路も使うよ! 診察は5分で終わるよ!)


「とりあえず、家族に連絡します。……その病院には、家族に連れてってもらう感じですか?」

「うーん。救急車で行っちゃおうか」

「……え?」


 ということで、次回。

 人生初の救急車搭乗になりやす。

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る