再び自宅療養 二月中旬
受診も終え、自宅療養二週目に入る。
受診前はボロボロだったメンタルが緩和されたのか、身体がとても軽かった。
そして、もう一つ私の心を前向きにしてくれる要素が出てきていた。
二週目に入ったあたりから、複視が明らかに良くなってきていたのである。
まだ完璧ではないものの、分離していた視界はボヤける程度まで回復。下垂も若干良くなり、目も前より開くようになっていた。
当たり前のことなのだが、人間にとって五感というものはめちゃくちゃ大事なものだ。
昔、甘味が酸味に感じてしまう味覚障害になった時期もあったが、その時もだいぶ苦労した記憶がある。
ただ、それ以上に視界が不自由になるのはキツい。生活の大半は視力によって成立されているというのを本当に思い知らされた。
っていうか、普通にスマホ見れないのつらい。(スマホ中毒者)
そこの回復の兆しが見えてきたことは、私にとってはかなりのメンタル回復剤だった。
加えて、苦痛だった食事も工夫次第で軽減できることに気づき始めた。
おかずは固いものは避ける。
とにかく刻んで、できればトロミをつける。
主食は、たまごかけご飯か、お茶漬けか、あんかけご飯か、具なしカレー。
もう老人食だな……と、色々思うところはあったが、どうせ誰に見られる訳でもないし、変なプライドはもうなかった。
とにかく咀嚼に負担が少なく、飲み込みやすい形態のものを用意すること。
無理せず、二、三口食べたら休憩すること。
一時間かかってもいいから、とにかく食事をツラいと思わないこと。
それでもしんどい時は、ウィダーインゼリーやメイバランス等の高カロリーゼリーで補うこと。
これを意識するだけで、本当に楽になった。
っていうか、目も良くなってるしもう完治みたいなもんだ。治ったわ、もう。
よかった、よかった。
などと、逆にポジティブになりすぎた俺のメンタルは完璧に調子にのっていた。
なんか、身体に謎の湿疹が出来始めているし、痰もやけに絡むし、声もかすれてうまく出なかったりしたけど、何故か全然気にならなかった。
そもそも、口の症状なんか対処法を見つけただけで全く良くなっていないのに、なぜ完治に向かっていると思い込んでいたのか。
アホである。
まあ、今考えると一種の防衛反応みたいなものだったのかもしれない。
自分の身体に起きていく症状と向き合うのがもう怖かったのだろう。
勿論心配し過ぎるのは良くない。
病は気からとは本当によく言ったもので、思い込みで体調は悪くなったりする。
だから、"まあ、そのうち良くなる"という心の持ち方は割と大切だとは思う。
ただ、明らかに出ている身体の不調を放置するのは現実逃避みたいなものだ。
特に私のこの病気は、自身の身体から発せられているサインを見逃すとちょっとシャレにならないことになる。
滅多に死ぬ事はないのだけれど、調子こいてると死ぬ。そんな病気。
後々、その片鱗を私は体験することになるのだが……それは、また少し先のお話し。
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