第24話 牛見 叶衣莉
「以外だな」
「何が?」
「乃亜なら
それはうちも思っていた。
だから乃亜の行動には気をつけていたけど、乃亜は胡座をかいてぼーっと成り行きを見ていた。
「だって
「そういうものか」
彩楓はピンと来てない様子だけど、うちはなんとなく分かる。
自分のしたいことを人に勝手にやられるのは嫌だ。
相手が善意でやっているのだとしたら尚の事やめてほしい。それはただのありがた迷惑だ。
「蒼ちゃんの仇は蒼ちゃんが取らないと意味ないもん。彩楓だって自分の復讐を他の人に横取りされたら嫌でしょ?」
「それはそうだな」
話は終わったようで、乃亜が立ち上がる。
正直に言って今の状況はやばい。
数ではこっちが勝ってるとは言っても、うちはまともに立てないし、彩楓も無理をしないと走れそうにない。
それにひきかえ乃亜は、さっきの四対一で消耗した体力はおそらく回復している。
つまり万全の乃亜とまともに動けないうちらで戦わなくてはいけない。
まぁそれでも戦わなくては殺されるだけだから殺るしかないんだけど。
(銃弾は後九発か)
乃亜に撃ったところで当たらないのは分かってるけど、銃を撃てば絶対に音を聞く。
ならその瞬間にうちのスキルで乃亜を殺す。
「彩楓。うちが乃亜を殺す。ここで共闘は終わりだ」
それだけ伝えて乃亜に銃口を向ける。
「そうか。なら死ね」
「え?」
いつの間にか背後に居た彩楓に心臓を刀で刺された。
「なん、で」
「ほんとに乃亜を殺されても困るからな」
「お前は」
うちがスキルで彩楓を殺そうとしたら、彩楓にうなじから喉を刺された。
「ありがとう
彩楓が無表情のままにそう言う。
(彩楓にとってうちは……)
でもうちは彩楓を恨むことなんて出来ない。
それはうちが今までやってきたことと同じだから。
うちの罪が映し出される。
うちの罪はいわゆる詐欺みたいなものだ。
正確には違うけど、人を騙すというところだけを言えば同じだ。
うちは見た目が幼いからとよく馬鹿にされる。
でもうちはそれを逆に使うことにした。
男と言うのはBLが嫌いな女子がいないのと同じように、小さい子が嫌いな奴はいない。
いくら違うと言ったところで、いざ無防備でか弱い子がいたら悪いことを考える。
もちろん善意で『助けたい』と思う奴もいるのかもしれないけど、そんなのは建前か、本気でも落ちる時は一瞬だ。
うちはそれを利用して夜中に家出少女のフリをしていいのを探した。
そして良さそうな男を見つけたのでそしつに近寄った。
歳は二十代後半ぐらいの見た目で、指輪もしてなかったから決めた。
やっぱり独り身じゃないと家出少女を拾うのは抵抗があるだろうから。
うちは元気がないようにして、その男に近づいて行くと案の定「君、どうしたんだい?」と声をかけられた。
だからうちは「……別に」と素っ気なく返してその場を去ろうとした。
でも自分をまともだと思ってる大人というのはその状況を見過ごせない。
その男もそうだったようで通り過ぎたうちの腕を掴んで「家に帰ろうとしてるんだよな?」と聞いてきた。
これで準備は整った。
うちは振り向いて涙を流しながら「……帰りたくない」と涙声で言った。ちなみにうちは一人暮らしだ。
そしたら「今晩だけとめてあげるよ」と紳士ぶりながら言ってきた。
だからうちはその男の家に行った。
部屋の隅でうずくまっていたうちに「とりあえず風呂にでも入ってきたら?」と言ってきたので、うちはお風呂に入った。
お風呂を出ると晩御飯が用意されていた。
この男は料理が得意なようで、晩餐にありつけた。
そして男が片付けをしてからお風呂に入ったのでうちは準備を始めた。
男がお風呂から出てくると部屋の隅でうずくまるうちに「ベッドは使っていいから」とまた紳士ぶったことを言ってきたので「いえ、うちは床を使わせてもらえれば」と返した。
でも男が引き下がらなかったので「じゃあ一緒に寝てもいいですか?」と男の服の袖をつまんで、寝巻きにと借りた男のシャツを握りながら上目遣いで言った。
すると男は生唾を飲んで「分かった」と了承した。
男は「明日も早いから」とさっさとベッドに入った。
うちも「失礼します」と伝えて隣に入る。
そして壁の方を向いている男に「ありがとうございます」と伝えて抱きついた。
男は身体をビクつかせ、こちらを向いた。
季節的に二人で一緒のベッドに入ると汗ばむようで、男は少し暑そうだ。
うちはそんな男の頬にキスをして「こ、こんなのでお礼なんて言うつもりはないですけど、今あげられるのはこれぐらいしかなくて」と言った。
男は頬を赤らめてうちを見ながら息を乱す。
(落ちちゃった)
これで全ての準備は整った。
後は最後の一押しで「うちに出来ることなら何でもやりますから、少しだけここに置いてくれませんか?」と伝える。
男は「何でも……」と言ってうちに覆いかぶさった。
男はうちを息を乱しながら見ている。
そしてうちの華奢で綺麗な肌に手を触れようとしたので「いや」と抵抗した。
すると男が「君が何でもするって言ったんだよ」と言ってきて服の中に手を入れようとしたので「いや、い、はぁ飽きた」と言って男の急所を蹴った。
そして男が悶えている間にベッドから下りて「やっぱり男は男だよな。うちはやっぱり女の子同士がきゃっきゃっしてんの見てる方がいいや」と男を見下ろす。
男が「なんでこんなことを」と聞いてきたので「ロリコンから本物のロリを守る為」なんて今考えたことを伝える。
本当は男を手玉に取るのが面白かったからだ。
うちの手のひらでコロコロと転がる様はまさに滑稽。
うちは人の汗を舐めれば大抵のことは分かる。
だからさっきキスした時にこの男から『期待』や『興奮』などの感情あることが分かったから行動に移した。
あの時に『不安』や『恐怖』などの感情があれば男が寝た後に帰るつもりだったけど、やっぱり男は男だったから制裁を与える。
うちはベッドの脇にセットしておいたスマホを取って男に見せながら言う「ちゃんと撮っといたから。これであんたはもうおしまい。美味しくない食事をありがとう。じゃあね」
そうしてうちは男の家を出た。
これは脅しであってさすがに警察に通報なんてことさすがにはしない。
そしてうちはその後も何人かの男に同じことをした。
そして全員が同じようになった。
そんなことを続けていたある日。
最近では少し肌寒くなってきたので汗で感情を判断するのが難しくなってきたのでそろそろやめようかなと思い出してきた。
そんなことを考えながら歩いていると、最初にうちが標的にした男が変な集団と一緒にうちを囲んだ。
男は「お前の罪が裁かれる時がきた」と言い、うちは為す術なく気絶させられた。
そして目が覚めると最初の部屋に居た。
うちだっていいことをしてたつもりなんてなかった。
いつかは痛い目を見るとも思ってはいたけど、唐突すぎて理解が追いつかなかった。
とりあえず第一回戦ではか弱い少女を演じて殺しながら生き延びた。
うちのスキルは『虚偽』効果は『嘘が本当になる』ただし使えるのは五分に一回。
ほんとにうちらしいスキルだった。
一回失敗したら何も出来ないところとか。
第一回戦が終わる頃には落ち着いて考えられて、自分のしたことに対する報いが訪れたのだと理解した。
だからと言って簡単に死ぬのも面白くないから、足掻いてみようと決めた。
もしこれで生き延びれたらうちのしたことは間違ってないと自分を誤魔化せる。
そんなことを考えていると、目の前で百合の花が咲いていた。
とても綺麗な百合の花。うちはつい見惚れてしまった。
(うちもこんな綺麗な花を咲かせたかったな)
そんなことを思いながら眺めていた。
もううちにそんな綺麗な花を咲かせることは出来ないのに。
でも眺めすぎたおかげと言うのかは分からないけど、うちもその綺麗の中に入れてもらうことが出来た。
近くで綺麗を眺めていれば、うちも綺麗になれるかもしれない。
そして自分のやったことが許されるかもしれないと。
でも結局は彩楓に殺されることで報いを受けた。
これがうちへの罰。
自分で散々やってきた、相手に期待をさせるだけさせて裏切る。
されて初めて気づいた。これは結構嫌だ。
だけどうちに彩楓を恨む権利なんてないから届かないのは分かってるけど、消える前に言うよ。
(うちと一緒に居てくれてありがとう。頑張れ)
それを最後にうちは消えた。
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