第13話 第二回戦第一試合決着

「あ、スタートの合図とかないんだ」


 私は、何のアナウンスも無いのでそう判断してとりあえず右隣の男を撃ち殺した。


「は?」


「殺せるってことは始まってんだよね」


 私は隣の男を撃ち殺した流れで、その隣のケバい女を撃とうとしたけど、私の銃声で始まっていることに気づいたようで、逃げられてしまった。


「この距離じゃ、動く的は狙えないかな」


 私は別に銃が得意とかいう訳ではない。ただセンターに捉えて引き金を引いているだけだ。


「うわっ」


 私が次は誰を狙おうか感がていたら、左隣の屈強な男に撃たれたので、それを躱す。


「どんな反射神経してんだよ」


「反射神経じゃないんだよなぁ」


 私はその男に一発撃ってから距離を取る。


(なんか私狙われてない?)


 残っている三人がみんな私の方を見ている。


(どうしたものかな)


 そんなことを考えている間も私は三人に撃たれ続ける。


「何で当たんないんだよ」


 屈強な男が焦りながら言う。


「いいから当たるまで撃ち続けろ。あいつを最初に数で殺さないと勝ち目はないんだから」


 ケバい女も焦った様子で言う。


「……」


(あの子、可愛い)


 もう一人は蒼ちゃんと同い年ぐらいの子だ。


 ただ黙って私を撃ち続けている。


「クソッ、弾切れか。」


 屈強な男が十発撃ったところで銃を捨てた。


(弾少な)


 バトルロイヤルで使いすぎたのか、それともナイフで一人だけ殺したのか。


 どっちにしろ少なすぎる。


「俺は肉弾戦に移る。分かってると思うけど、俺を後ろから撃ち殺したら数の優位が取れなくなるからな」


 屈強な男がナイフを両手に逆手持ちする。


「いいよ、行きな」


 ケバい女が不敵な笑みを浮かべながら屈強な男に言う。


「女子高生が俺に勝てる訳ないんだよ」


「ほんとだ、私制服じゃん」


 今更ながらに、自分が制服なことに気づいた。


 屈強な男が私にナイフを斬りつける。私はそれを全て避ける。


「さっきから何で当たんないんだよ」


「聞こえるんだよね。あなたの心の声」


 もちろん嘘だ。私が聞こえるのは腕を振り上げたり、振り下ろしたりする時の音。


 私はそれを聞いてなんとなくで避けているだけだ。


 銃の弾も同じ原理で避けている。


「俺の心の声……。ならいいよな」


「なにが?」


「スキル『寵愛』」


(スキルなんてあったな)


 私はつい、スキルのことを忘れてしまう。でもこれでスキルがどんなものか見ることが出来る。


「俺のスキルは触れた女を服従させることが出来る」


「それって……」


「驚いた顔してんな。降参して俺の言う通りにするなら、俺がお前の罪を無かったことにしてやってもいいぞ」


 屈強な男が下卑た笑いをする。


 確かに笑は驚いた。それはそうだろう。


「あんた馬鹿なんじゃない?」


「何?」


「自分からスキルの中身を教えてることがまず馬鹿だし、そもそも私に触れることが出来てないのに、そんなスキル使っても意味ないじゃん」


 私はこの男が馬鹿すぎて驚いた。


「それに、『女子高生が俺に勝てる訳ないんだよ』とか言ってたけど、その前には銃使って遠距離からチキン戦法してるし。筋肉作りに鶏肉がいいって聞くけど、食べすぎて自分がチキンになっちゃった?」


「殺す」


 屈強な男が額に血管を浮かべて怒る。


「無理だよ。お前はもう死んでるから」


「何を、言って」


 私は屈強な男のこめかみに鉛玉を撃ち込んだ。


 屈強な男はその場に倒れる。


「ったく、使えない奴。図体がでかいから少しはやれるのかと思ったら」


 ケバい女が屈強な男の顔を踏む。


「男を操る。それがあなたのスキルか」


「そ。『傀儡』って言うの。私と目が五秒合った男を操ることが出来るの」


「つまりあなたはもうただの雑魚と」


 もうこの場には女しか居ないから、ケバい女のスキルは何の役にも立たない。


「そうね。銃じゃあなたは殺せないから私は降参する。な、んで」


 ケバい女が両手を挙げながら私を撃とうとしていたので、先に頭を撃ち抜いた。


「そもそもこの試合に降参なんてないし」


 これで残りは私と可愛い子。


(ずっと愛でてたい)


 光亜といい勝負をしそうなぐらいに可愛い見た目をしている。光亜の方が可愛いけど。


 髪は短めの茶髪で目は半目でどこかやる気のないような目で私のことを見ている。


「女の子は好き?」


 半目の可愛い子がいきなりそんなことを聞いてきた。


「人によるけど、大好き」


「私のことは?」


「まぁ可愛いとは思うけど、私の一番ではないかな」


「そ。じゃあ私のスキルは役に立たないや」


「操る系のスキル大好きすぎない?」


 スキルの内容を聞いた訳じゃないから違うかもしれないけど、みんな人を操る系のスキルだ。


「意味ないから教える。私のスキルは『魅惑』私を可愛いって思った相手を操る。そこのおばさんの上位互換」


 表情は変わらないが、少し誇らしげにケバい女を指さしながら言う。


「可愛いとは思ってるけど」


「多分あなたの一番が強すぎる。私は負けた。この負けを糧にあなたを殺す」


「その言い方可愛くないよ」


 私の言葉を合図にお互い引き金を引いた。


 お互いに躱し、肉薄する。


「ここまでくると銃を避けるのは必須スキルなのかな」


「私はゲームで反射神経鍛えた」


「それだけで避けられるならゲーマーはみんな銃を避けられるよ」


 本物の銃を見た事がないから分からないけど、多分この銃は少し弾が遅くなっている。


 だから事前に撃つことさえ分かっていれば、避けるのは容易い。


「銃じゃ埒が明かないや。こっち使お」


 半目の子が銃をホルスターにしまって、ナイフを取り出した。


「じゃあ撃ち続けよ」


「懐に入ったら私の勝ち」


「入れるかな」


 半目の子が私に近づいて来るので私は銃を撃ちながら距離を取る。


 半目の子は当たりそうな弾をナイフで弾いている。


「彩楓もびっくりの芸当」


 彩楓が刀で銃弾を斬ったのにも驚いたけど、この子はナイフで何発もの銃弾を弾いている。


「うわ、既視感」


 私は下がりすぎて壁に背中が当たる。


「入ったよ」


「そうだね。ちょっとまずい」


 半目の子に首をきられそうになったので、それを咄嗟にナイフで受ける。


「その状態でいつまで耐えられる?」


「無理無理。すぐ限界くるよ」


「じゃあ私の勝ち。死んで」


「やっぱりには力で勝てないし」


 半目の子が動きを止めた。私はその隙に距離を取る。


「なんで私が男の子だって思うの?」


「男の子と女の子って歩く時の音が違うんだよね。それに身体の動かし方って言うのかな、その音も違うんだ」


「音。そっか、意識してもそういうところは変えられないんだ」


 半目の子が呆然と立ち尽くす。


「バレちゃった。でもバレたなら」


 半目の子が目を見開いて、薄く笑いながらこちらに顔だけ向ける。


「全員殺せばいいよね」


「怖いよ」


「死ねや」


 半目の子から狂乱の男の娘が私に向かって走って来る。


 銃を撃っても全て躱されるので、銃はしまってナイフを構える。


「死ね死ね死ね。俺を男なんて言う奴はみんな死ね」


「そっちが素なのかな。これが最近のゲーム中毒の子か」


 最近の子はゲームで人を殺しすぎて殺すことや死を軽くみている。


(まぁ私もこのゲームが始まってすぐにあっさり人を殺したけど)


 そんな奴に注意なんてされたくないだろうから、私が殺して死というものを教えてあげることにした。


「でも、難しいかな?」


 さっきから私は防戦一方になっている。


 私は相手のナイフを避けたり時にはナイフで受けたりしているが、どうも攻めに転じれない。


「死ねぇ」


「死なないって」


 私達はナイフをぶつけ合い、鍔迫り合い? をしている。


「力でねじ伏せて殺す」


「そっか。その手があったね」


「なにを言って、は?」


 私はどんどんナイフを押し返していく。


「何で。さっきまで力で勝ってたのに」


「ひゃは♪」


「え?」


「死ね死ね死ね。私の前に立つ奴はみんな死ねぇ」


 狂乱から覚めた半目の子が一瞬力を緩めた瞬間に、ナイフを押し返してその勢いのまま首を斬り裂いた。


「人格が崩壊してる」


 半目の子はそう言って地に伏せる。


『第二回戦、第一試合決着』


「ひゃははははは」


 転移されるまでの間、コロシアムには私の嗤い声が響いた。

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