第10話 やっと始まる話し合い(脱線しまくり)
「ほら、始めるからイチャイチャするのやめて」
「お前が言うか」
私が手を叩きながら
「そうだよぉ。
こちらもすっかり仲良くなって談笑をしていた
「しょうがないじゃん、
私はそう言いながら光亜の頭を撫でる。
「乃亜さんまた脱線しますよ」
「そだった。さすが光亜。じゃあ話し合いを始めよー」
「そもそも話し合いって何を話すんだよ」
「彩楓。始めよーって伸ばしたら、おーって言わないと」
「なんで私が責められてんの?」
だってそうしてくれないと、私の挙げたこの右手が可哀想だ。
「おぉー」
「さすが未来空。それを自分の手でやったら完璧だった」
未来空は膝の上の蒼ちゃんの腕を挙げさせている。
「未来空さ、未来空。恥ずかしいの?」
「んーん。自分の手を上に挙げんのがぁ、めんどくさかっただけぇ」
「そうなんですか」
「納得するんだ」
私は思わずつっこんでしまった。
「乃亜さん」
「もぉ、未来空のせいでまた脱線だよ」
「乃亜ちゃん。今のは彩楓ちゃんのせい」
「何で」
「そうだね。彩楓がカッコつけるから」
「つけてねぇわ」
彩楓が怒鳴ると、膝の上で彩楓にもたれかかっている叶衣莉がビクつく。
「さいかぁ、怖いよぉ」
「ごめん。つい」
「あれは素なのか? だったらやばいぞ」
叶衣莉はもう彩楓に全てを委ねている。
あれが全て計算でやっているなら相当の手練れだ。
「もぉ、乃亜さん」
光亜が頬を膨らませながら私を少し怒った様子で見てくる。
「可愛すぎか。よし、話な。私がしたいのはこのゲームのこと」
やっと私の話したかったことが話せる。まったく、個性的な人が集まるとこれだから。
「今なんかすごいキレたくなった気がするけど、それは置いといて。ゲームのこと?」
「そそ。5W1Hで考えよ」
「それ意味あんのか?」
「これディベートだから否定意見言ったら駄目だよ」
「めんどくさ」
とりあえず否定意見を言ったら、他のみんなからの命令をなんでも聞かなければいけないことになった。
「まずいつ。それはスマホで分かるけど十月三十一日の八時だね」
「次は何処で? ここ何処なの?」
「日本であることは間違いないよね」
「なんで?」
「みんな日本人じゃん。それに少なくとも私は気絶してからここに運ばれるまでに一時間しか経ってないから」
どれだけ頑張っても一時間で海外に行ったとは考えにくい。
「全員気絶させられたのか?」
「それはどのようにでしょ。順番がいい」
「わがままな」
彩楓がめんどくさそうにするが、私の意見に反対はしないようだ。
「乃亜ちゃんの今のってひてー意見じゃないのぉ?」
「甘いな未来空。今のは否定意見に見せかけての提案だ。だからセーフなのだ」
「ずるいねぇ」
「策士と言ってくれ」
「つまり乃亜は言葉は変えたけど否定意見を言ったってことか?」
「さて次は誰が、だね」
「こいつ」
別に私は否定意見を言ったのを誤魔化したかった訳ではない。また話が脱線するのを危惧しただけだ。そもそも否定意見なんて言ってないし。
「私は同じクラスの奴となんか変な集団に」
「私は弟弟子と謎の集団だな」
「あたしはぁ、誰だっけぇ?」
「うちは、昔別れた相手と謎の集団に」
「僕はお母さんと謎の人達に」
「わ、私は……、親戚の人と変な人達に」
未来空は置いておくとして、みんな共通なのは謎で変な集団に襲われたこと。
そして当たり前だけど、自分と近い人に襲われている。
「てか彩楓の弟弟子って何?」
「何って何だよ。私の父親は、まぁ簡単に言うと剣道を教えてるんだよ。私もそこで習ってたから弟弟子がいんの」
彩楓がわざわざ刀を使っていた理由はそれなのかもしれない。竹刀と刀は違うけど。
「そこでその姉御みを身につけたのか」
「誰が姉御だ。叶衣莉のこれは演技だろ」
彩楓はいつの間にか叶衣莉を名前で呼ぶようになっていた。本当に妹扱いしているみたいだ。
「演技じゃないよ、お姉ちゃん」
「誰がお姉ちゃんだ」
彩楓はそう言いつつも少し嬉しそうに叶衣莉の頭を撫でる。
「叶衣莉は昔付き合ってたって言ってたけど、男? 女?」
「どっちだと思う?」
「女」
「当ててどうする。嘘でも男って言っとけ」
私からしたら叶衣莉は女としかよろしくやらないようにしか見えない。
「嘘で言うなら女って言うだろ」
「お姉ちゃんまでぇ」
「未来空は忘れたの?」
あっちはあっちで楽しそうなので、ほっとくことにした。
「んー。誰かにぃ、襲われたのはぁ、覚えてるよぉ。でもぉ、それが誰かはぁ、分かんないよぉ」
「謎の集団は?」
「あたしぃ、一人相手にぃ、負けることないからぁ」
「そういえば猫矢さんに喧嘩売られたっての何なの?」
お楽しみ中の彩楓が今更なことを聞く。
「それねぇ、光亜ちゃんがぁ、あたしの周りで銃を乱射してぇ、人を集めたのぉ」
「それで蛇目さんに倒させたと」
「最高の流れは共倒れだったけどね」
光亜に言われた作戦。一人が彩楓の足止めをして、もう一人が未来空の周りに人を集めてバトルロイヤルを終わらせる。
彩楓とは確実に戦闘になるだろうけど、未来空はめんどくさがって襲って来ないと思ったので、未来空の方には光亜を行かせた。
「あれ乃亜ちゃんの作戦?」
「私です。ごめんなさい」
光亜が律儀に未来空に頭を下げる。
「別に怒ってないよぉ、作戦的にはいいと思うしぃ」
「ありがとうございます、って言っていいんですか?」
「いいんじゃなぁい」
「じゃあ次いこ、何を。これは私達を?」
「乃亜ちゃんのそういうとこ好きぃ」
未来空が
「私も乃亜さんのそういうところ好きです」
「光亜から告白された。これはもう結婚して席に取ってもらうしかないよね」
「何の責任ですか?」
「私をドキドキさせた」
「ふふ」
光亜に笑って流された。
「何を、はそれでいいんじゃないか」
「叶衣莉が普通に戻った」
「これ以上やると戻れなくなるからな。彩楓の姉御みやばい」
「姉御」
「やめろ」
これからは彩楓をたまに姉御と呼ぶことにした。
「じゃあ次か、なぜ。なぜって何?」
「うち達がここに送られた訳だろ」
「それは分かるんだけど、それって考えて分かるやつ?」
「うちはまぁ、うん」
「私もなんとなくは」
「あたしはぁ、わかんなぁい」
「僕も分かります」
「私も、はい」
「なんでみんな分かんの」
私には本当に分からない。そもそも罪だって分かっていないのだから。
「まぁ、これは各々のことだからいいよな」
「私のが気になる!」
「そんなん知るか」
「彩楓のいじわる。いいよぉだ、次いくから。最後は彩楓が楽しみにしてたどのように、だね」
「そういえばさっき否定意見言った奴がいたな」
「そうやってすぐ話の腰を折るんだから。どのように、こそ分からないよね」
「そうだね。うち達気絶してた訳だし」
「ちなみに私はスタンガンやられた」
ふと気になったのでスタンガンを受けた場所の服を捲ると、そこには痕がついていた。
「結婚前の女の身体になんてことを」
「乃亜ってそういうの気にすんの?」
「別に。見た目の善し悪しで判断する奴に興味ないし。そもそも私は光亜にしか興味ないから」
「そんなこと言うと彩楓が泣くぞ」
「彩楓はもう私を捨てて叶衣莉のものになっちゃったからさ」
私は少し寂しげに言う。
「安心しろ、彩楓はうちが幸せにするから」
「任せたからね」
「任された」
「愛されてるねぇ」
「何も嬉しくないんだけど」
彩楓が呆れた様子でため息をつく。
でも私と叶衣莉には分かっている。内心では悲しさと嬉しさが混じりあって戸惑っているだけだと。
「可愛いなぁ、彩楓は」
「おいうちの彩楓に色目を使うな」
「ほんとめんどくさい」
彩楓のため息の回数がどんどん増えていくことに気づきながらも、私達はやめる気はない。
聞きたいことはだいたい聞けたからと、しばらく彩楓いじりを続けた。
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