初めての美容院

「いらっしゃいませ~」

 受付のパーマのお姉さんが言った。

「予約していた如月です」

 メンバーズカードを出して受付を済ませる如月。

「は~い、メンズカットで予約入っているけど、どうしたの~?」

「今日は私の先輩の髪をカッコよく切ってください」

「先輩ね~、マッシュベースのセンターパートでいい~?」

「はい!マッシュのセンターパートでお願いします」

 如月は俺の肩をパーマのお姉さんの方に押し出した。

「今日担当する、加藤だよ~よろしくね~」

「よ、よろしくお願いします…」

 やっぱ初めての美容院って緊張するなあ。まあここから先なんて誰も興味ないし割愛するわ。

「お疲れ~、カッコよくなったじゃん」

 美容師が俺を見て言う、嘘も方便とはこの事か。俺は椅子から降り、雑誌で暇を潰す如月の元に向かう。

「っお!先輩~!カッコいいじゃん」

 読んでいた雑誌を閉じ、俺の方を向いた。

「そ、そうかい?」

「前よりこっちの方が断然似合いますよ」

 髪型を褒められるって、悪い気はしないなあ。


 会計を済ませて外に出るが、外はまだ明るい。

「この後時間ある?」

 お礼に飯でも奢ろうかと思って、俺は如月に予定を訊いた。

「何ですか?先輩、まさか私をホテルに誘おうとしている?」

 如月は冗談めかして言った。

「違うわ!飯に誘おうとしたんだよ」

「飯ですね!いいですよ、勿論先輩の奢りで」

はなからそのつもりだけど…」

「わーい先輩好きー!私ぃ意外と大食いなので覚悟しておいてくださいね」

 如月は何歩か前に出て、くるっと振り返り際に言った。

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