第30話 月夜(3)
「
姫は口に出して言ってみる。
「幾百年」
千年よりは短い、というのは、わかる。
しかし、幾百年も乱れが続くとは、どういうことだろう?
その幾百年のあいだに、生まれ、死んだひとはどれほどいるのだろう?
そのすべてが、生まれたときも乱れた
姫は首筋の後ろが震えた。
梅が続ける。
「封建というものは、ずっと昔、人がみな
姫は驚く。
「では!」
「そのとおりです」
姫が何も言っていないのに「そのとおり」と言うとは。
梅は何も言わなくても姫の心がわかるのだ。
それが、
「もちろん、その大伴の族に仕える文人が言うことが
梅がことばを切る。
今度は、姫が横目で軽く梅を見た。
それに
「
「それは!」
と、姫は身を起こしかけた。
大王が最も頼りにしている者たちが、大王の考えのとおりには行かないと思っている。
大王の考えを
そういうことだ。
父に。
大王にそのことを知らせなければ!
しかし、梅が
「大きく動かれますな」
その鋭い動きを見せながら、梅がそれまでと変わらぬ声で言う。
「夜は人の声が遠くまで聞こえます。それに、この宮の中にいまわたしたちと共にあるのは、神々や
大王の宮であるからにはここには神様もいらっしゃるだろうし。
森のなかだけあって、小さな鼠が多いのだが。
それだけではない。
たしかに。
それは、
そのころから梅は姫の遊び仲間だった。
そのころの梅は
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