第29話 月夜(2)
「どうして
その文人たちに従って、鷦鷯は
しかも、鷦鷯としては、やりたくないことを、その心を
「なかなか学ぼうとなさらないうえに、すぐに腹をお立てになるからです」
「ああ」
それはそうだろうな、と、姫は思う。
梅が続ける。
「文を学んでいらっしゃるので、
「鷦鷯らしい」
姫はそう言うしかない。
そういう子なのだ。
姫の前でも、筆を
「それに、鷦鷯さまは、文もお覚えにならぬと」
「うん」
もともと、暴れ者ではあるが、物覚えが悪いということはなかった。細かいことまでよく覚えている子だった。
海の果ての国の文などもともと覚えたくないのか、その
もしかすると、と姫は思う。
その小刀で文人たちを
それならば、文人たちとて、鷦鷯を悪く言いたくなるだろう。
「そのことは」
と姫が
「父上や母上は知っていらっしゃるの?」
それは姫の
姫だって知らないし、知ろうとしてはこなかった。
でも、梅は答える。
「お母上の
「知っているのではないかなぁ」
と姫は言う。
息をつき、乱れていた
「父は、鷦鷯の学びを妨げないで、と言っていたでしょう? うまく進んでいないことは知ってるんだよ」
「はい」
梅はすなおにそう答える。そのまま
「大王さまもその文人らに文を学んでおられます」
と言う。
それはそうだろう。
しかも、
「上は大王から下は
梅が言って、姫に軽く顔を向ける。
「うん」
姫が何も求めないのに、梅から話を切り出すとは、どういうことだろう?
たしかに父大王はそんな話をしていたが。
梅が言う。
「
「千年?」
千年と言われても、よくわからない。
「そうです」
と梅が言う。
「大王さまの
「それは」
と言いかけて、姫はことばを止める。
あの
どれほどの昔なのか。
姫の身ではわかりようもない。
いや。
それよりも。
いま、梅は「そのころの漢の国の成り立ち」と言った。
それは?
「つまり、いまは違うということなの?」
「はい」
と梅はすぐに答えた。
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