第22話 幼武大王の影(5)
「
と言ってから、父はまだ迷う。
しばらく目を閉じる。
その
姫が黙っていると、
「その」
と父
「
梅が横目で姫を見る。姫は黙って父の話を聞く。
「何にしても、その狩りでより
狩りを
父大王が続ける。
「それを確かめるために、
しばらく、ことばを切る。
「この父も、父よりまだ小さかった
そうだったのか。
「その狩りの
父大王は目を
「それは
父は
「そのとき、弘計とともに馬の背に乗せられ、その馬を操る
父は、言って、細かく首を振った。
姫は、ことばが出ない。
自分の親が殺されたのに、そこから逃げるところしか覚えていない。
しかも、なぜ逃げているか、父にはわからなかったのだ。
どんな心持ちだろう。
「その逃がしてくれた大人がだれかは、わからぬのですか?」
梅が言う。
姫がことばが出ないときに、
父大王はうなずいた。
「
なんとはなく遠回しな言いかただと姫は思う。
何が言いたいのかはわからない。
「そこから、近江より遠い北の海の近く、
播磨は吉備に近い。そして、たしかに、播磨の明石に住んでいるころは、大和の者たちもよく訪れてきていたが、吉備から来て明石に住んでいる
「そして、幼武大王の姫を、つまりおまえたちの母をこの父に
自分で
それが「大王」というものの力なのか。
「ならば」
と姫が言う。
「その吉備臣をいまの
父がどう答えるかはわかっていた。
梅もどんな答えかはわかっているのだろう。父が答える前から口もとをゆるめて笑っている。
「だから」
父は、言って、ふう、と鼻から息をついた。
「そうはいかぬのだ」
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