第18話 幼武大王の影(1)
神の
姫と梅を座らせると、向かいに腰を下ろす。
神の前では、いや、ほかの臣たちや、まして民の前でもしない斜め座りだ。
ひとつ息をつく。
「その、
と言い、探るように目を上げて言う。
「
姫が答えるよりも早く
「私が姫に申し上げました」
と
おそらく、梅が告げたことにするように、あらかじめ話ができていたのだろう。
幸と。
もしかすると、姉姫の
父大王は梅に向かって
まだ子どもの梅が姫にそんなことを話すわけがない、と、父は思っているのだろうか。
姫がかまわず言う。
「
父がいぶかしげな顔で姫に目を移す。
姫がなぜそんな歌を歌い出したか、わからないからだろう。
姫は続ける。
「
「君が行き 日長くなりぬ
と続く。あなた様がいなくなられて多くの日が経ちました。山をたずねて迎えに行きましょうか、それともずっとお待ちしていましょうか。そんな歌だ。
大鷦鷯命が、
しかし、それでも
父
姫が言う。
「
葛城、
「大鷦鷯命が葛城臣の姫を大后になさったのです。その葛城とは同じ族の平群臣の姫を
「そうはいかぬのだ」
父大王は答えた。繰り返す。
「いまの世では、そうはいかぬ」
なぜそうなのかは姫にもわかる。
父大王は、葛城の族に頼るのをやめて、
しかし……。
どうして、そう決めたのだろう?
だから、わからないふりで、父大王に首を
大王は取り合わずに
「そんなところに、
と言って、斜めに、いたずらそうに、姫を見る。
「まあ、和珥の姫そのひとは、落ち着いた、
笑って見せる。父大王が姫にそんな顔をして見せたのはひさしぶりだ。
「その春日の姫というのは、おまえの
つまり、姉姫の上の姉が
「
ということは?
葛城臣の族に替えて和珥臣の族を取り立てたい?
しかし、いま和珥の族を取り立てて、何かよいことがあるのだろうか?
しかし和珥臣の族にはそれほどの勢いもない。古い族として敬われてはいるが、動かすことのできる兵は葛城臣の輩や物部連や大伴連ほどではないし、まして
まさか。
だとしたら、ここのところ心持ちのよくない母
それでは、その
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