第14話 母の御言持ち
姫と
姫が姫の宮に帰ってしばらくして、
母の前に麻の衣を着て行くと何を言われるかわからない。
麻の衣を着て行かなくても何を言われるかわからないけれど、わからないことは少ないほうがいいので、着替えて行く。
姫の御言持ちの
だから、幸だけに
この幸という女が、姫にはよくわからない。
幸は石上に来てから母の御言持ちになった娘だ。歳は、梅よりは上だが、姉姫の御言持ちの
幸も
話し好きで、だれとでも話す。そういうところは、近寄りがたい思いを抱かせる母とは違っている。
顔は白くて目鼻立ちも美しい。けれども何か隠しているところがありそうだ。
夜、顔の前に
そんなところがこの
幸は、また、嘘のつけない、
「お
と言ってはっはっはと声を立てて笑ったことがある。主人に言われたことをそのまま伝えるのが
でも、その裏表のなさのために、かえって、何か大きな「裏」を隠しているようにも見えるのだ。
そのことはわかっていて、姫は幸に聞いた。
「このお呼びは何のためです?」
さっき姫が
でも幸は考えもしなかったことを言った。
「鷦鷯さまが
姫の知らないあいだにそんなことがあったのか。
顔を合わせていないわけではない。日々、
だが、父が
たしかに鷦鷯は心が沈んでいるといえばそう見えたが、それは、文人たちに文を教わるのに疲れたからだろう、というくらいに思っていた。
「それで、大后さまが
それで鷦鷯は女は悪しきものとか言っていたのか。
「そんなところに姫が鷦鷯さまにあのような話をなさったものだから」
そう言って、幸は、くすん、と笑った。
この幸の笑いだけで、姫は、やっぱり女は悪しき者かも知れないと思ってしまう。
幸とはそういう女だ。
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