第11話 夏の日に鷦鷯と(1)
そのころよりももっと暑い夏が来た。
宮の
絹の
弟の
それがすべてではないけれど。
思いついたとき
鷦鷯はやがて大王の位を嗣ぐ
弟の宮に行き、
弟なのに官人には大兄様と告げなければならない。何が大兄だと思うけれど、弟がそういう位を与えられているのだからしかたがない。
官人は麻の衣に麻の帯を
これが
暑苦しい。
ほどなく官人が戻って来て、
「お上がりくださいませ」
と言う。
宮の殿居に上がってみると、
姫がここに来るのはわかっていたのだから、そんなに恭しくするなら先に退がっていればいいのに、姫が来てから退がるのは、文人がここにいることを見せたいからだ。
姫が来て、鷦鷯の学びを半ばで止めなければならなくなった。それを
そんなことにはかまわず鷦鷯の間に入ってみると、鷦鷯は、高い机の前で、
机の上に紙の
姉が来たのを見て、鷦鷯は、筆とその細い木の板を机に置いた。
「姉上、なんというお姿で」
見ているのは、姫の顔ではなくて、姫が着ている麻の衣だ。
麻の衣など、
「だって、
麻の衣は、夏は涼しいが、冬は寒い。せめて
それがいまは逆さになって、夏でも絹の衣を着ている。
その答えに、
「播磨にいたころとは違うのです」
と言う。
それは違う。播磨にいたころ、姫も小さかったし、鷦鷯はもっと小さかった。たぶん鷦鷯は播磨にいたころのことはほとんど覚えていないだろう。
でも。
姫は言ってみる。
「何が違うのよ?」
鷦鷯が心もちを悪くするのはわかっていた。
はたして鷦鷯は大きくため息をついた。
椅子に座って、立ったままの姉を見て、言う。
「われらは
「天下」って……。
それが姫たちの言う「
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