第6話 御言持ち
御言持ちというのは姫のいちばん近くに仕える
姉の御言持ちは名を
「強い弓はよい弓だから」
と言って、気もちよさそうに大笑いする女だ。
もっとも、姫はこの女が弓を引いているところをその目で見たことはないが。
姫も姫の御言持ちを召して、姉を迎えた。
姫の御言持ちは
梅という名にふさわしい、見るからに美しくて清らかな娘だ。
御言持ちとはことばを一つのまちがいもなく伝える者を言う。この梅は、その足の速さで、姫のことばを、すばやく伝えるべき相手に伝えてくれる。
御言持ちは、ことばをあやまたず正しく伝えるということで神に近いとされている。梅はさらにすばやく伝えてくれるので、頼りになる御言持ちだ。よほどしっかりした神様がついてくださっているのだろう。
御言持ちの娘の前ではおそれ多いということで、ほかの
婢を遠ざけるために、姉姫はわざと御言持ちを連れてきたのだ。
婢をとおして、姫と姉姫のことばが父母に漏れるのを避けるために。
姉姫は姫の向かいに腰を下ろすと、御言持ちの
もう一つ投げてきたので、それも受け取ってそのまま梅に渡す。姉姫は自分も一つを強弓に渡し、神様に唱えことばを言ってその桃にかぶりついた。
こんな食べかたは、いまの父の前ではできない。
もちろん、母の前でも。
姫は姉よりももうすこしおとなしくその桃を食べ始める。硬い実だったけれど、
姉姫と妹姫が食べ始めたのを見て、それぞれの御言持ちの
いや。
梅はほんとうにつつましく食べているが、強弓は汁を腕に
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