第7話 この国が認めなくても

 ナナとヒロは離婚し、ヒロは台湾へと飛び立った。

 ヒロと品川という若者が二人、日本を捨てた。ナナは親友と滅多に会えなくなった。

 ナナは、この国が同性婚を認めなければ、ヒロはずっと自分のものだと思っていた。だが、そうではなかった。この国が同性婚を認めないがゆえに、ヒロが遠くに行ってしまったのだ。

 ナナはヒロと離婚した後、誰かと結婚するつもりはない。ナナは恋愛が出来ないのだ。ナナもまた、性的マイノリティーだった。

 同性婚が認められないからと言って、当事者が結婚相手の性別を変えるわけがない。それは、異性愛者が同性と結婚しろと言われているのと同じ事だからだ。

 一方で、同性婚が認められたら、恋愛関係ではない婚姻も増えるかもしれない。友達同士で一緒に暮らすのに、結婚した方が便利だからとか。


 婚姻とは何だろう。子供を持たない夫婦と、友達同士で暮らす事と、何が違うのだろう。二人の仲は他人には分からない。最初は恋愛関係にあった夫婦も、数十年後には恋愛関係ではなくなっている場合も多いだろう。それでも、特に不便がなければ離婚はしない。婚姻関係にありつつ、恋愛関係ではない夫婦は、実は多いという事なのではないか。

 婚姻とは何だろう。異性同士が共に暮らすという意味以外に、何があるだろう。それは、同性同士では具合が悪い事だろうか。

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偽りの恋人 夏目碧央 @Akiko-Katsuura

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