第一章 14  長過ぎた1日・アリアの葛藤?




 漸く宿屋だ。前以て伝えてくれていたようでスムーズに話が進んだのだが、豪快な女将さんに可愛いと気に入られてしまい、ちょっと前までぬいぐるみ状態だったけどね。小さな娘さんにはお姉ちゃん呼ばわりだし。

 今は風呂も入れたし、寝間着に着替えてベッドにダイブしたところだ。そのまま枕を頭に轢いて、ごろりと仰向けになる。


「ああ――、長かった。さすがに疲れた!」


 というかいい加減あのぐうたらを起こさないとだ。大声の念話を送る。


(アリア!!!!! おーい、アリア!!! いい加減起きろ!!!)

《うー-ん、むにゅむにゃ、おはようございますー、カーズさん》


 ようやく起きた。マジで寝過ぎだろこいつは。


(どんだけ寝てんだよ、おかげでこっちは大変だったよ……)

《んー何となく夢では見てましたけどねえー。とりあえず詳しい説明プリーズ下さい》

(見てたんなら良くね?)

《いやいや、カーズさんの口からちゃんと聞きたいのですよー、うふふー》

(はあ、わかったよ……。全く手のかかる……)



 ・


 ・


 ・



《アーッハハハハハハハ――!!! ハァハァ……、もうダメ! 息が出来ません!》

(もうそのまま窒息してしまえ。ったく、こっちはこの世界の常識がないんだぞ。初日から不思議ちゃん認定されるとは……。理想のスローライフがー、ハァ……)

《もう無理ですねー!! ププ――ッ!!》


 くそー、こいつ殴りてえ。


(先ずは魔法だ、逆属性は普通使えないとか知らなかったぞ。媒介が必要とか、詠唱とかさー)

《うーん、まあ難易度は多少上がりますけど、基本的にこの世界の誰もがそう思い込んでるんですよ。逆属性は難しい→使えないって。でもその先入観がないカーズさんは別に何とも思わないでしょう?》

(確かにそれは言えてるな、それに両手からそれぞれ別属性の魔法とかカッコイイじゃん)

《でしょー? それが常識に縛られてない強みでもあるんですよー》

(なるほど、じゃあ呪文の名前を詠唱することで媒介にしたものから魔法を発動させるっていうのは? アリアはイメージの具現化って言ったじゃないか、その通りにやったら、師匠の頭がおかしいことになったぞ。師匠設定はアリアだけどな)

《うーん、私の頭がおかしいかは別問題ですけどー》

(ならおかしいってことで進めようか)

《酷いですねー、確かにそれでも発動できますよー。ですが最小のMPコストで発動されるので威力が低いですね。コストパフォーマンス優先の使い方ですよー。魔力が低い者達が考え付いた方法でしょうね。おそらく他の冒険者のMPや魔力はカーズさんと比較しても勝負にならない低さだったでしょー?》

(まあそれはあるなー。でもそれは俺の体にアリアの因子? があるんだからさ、魔力の保持量は比較したらダメだろ?)

『その通りですねー。だからそんなのは気にせず今迄通りの使い方が一番でしょうねー。イメージとその具現化、それが強い程魔法の威力や効果は強くなります。それが初級の魔法であったとしても。だからファイアボールで大岩を粉砕できたんですよー》

(ふむ、でもコストパフォーマンスは良くないんじゃないのか?)

《普通の人が使用するのは、ですねー。でもカーズさんは魔力量がずぬけているでしょう? だから無問題ですよ。珍しいとは思われるでしょうけどー》

(うーん、まあそこは目を瞑ろう。威力が下がったら危ないしな。あとは武具創造ってスキルを使ったことかな)

《履歴を確認……。なるほどー、結構魔力つぎ込みましたねー。使用魔力の量からもエグイの創ったんでしょー? 北欧神話の魔剣バルムンクねー、語呂がカッコいいからって滅茶苦茶してー》

(そこはほっとけ。確かにMPごっそり持って行かれたよ。スキルがアドバイスしてくれたからできたようなもんだ。しかもユズリハにも創ってやらなきゃいけなくなってしまったし)

《うむー、武器壊したからってそこまでサービスしなくてもいいのに律儀ですねー。それに一応スキルはAランク相当ですけど、魔力をもっと込めて精製すればSランクくらいはできますよ。精密なコントロールは必要ですけど。どうせなら教えてあげましょうか? 今日はもう寝るだけだし、多少消耗してても寝たら回復、自動回復オートヒールもついてますしね。どうしますか?》

(うーん、いや今日はもういいや。さすがに情報量が多くて疲れたし。でも一緒にクエストに行くあの二人の戦力アップは急務だな。巻き込んだ以上死なせたくないが、実力的には気になる。まだ1週間あるとはいえ、心許ない。最低限武器くらいはと思ったけど)

《普通の人間と自分を比較したらダメですよー。でも経験値共有化PTで鍛錬すれば、すぐにある程度にはなりますよ。今40程度でしょ? カーズさんはこの2日でいくら上がりましたか? 超成長付きですしねー》

(50以上……)

《ほらー、共有化するだけで一気に上がりますよー》

(2日でレベルがそこまで上がるのが異常なんだよなあ。思ったよりは数狩ってたみたいだったから上がるのは分かるけどさ。このままだと99でカンストとかにすぐなるんじゃないの?)

《ん? 99が上限なんて言いましたかー?》

(えっ? そうなのか? 普通にファンタジーってそういう設定じゃん)

《ファンタジー世界だけどゲームとは違いますよー。努力に上限はありませんからねー》

(マジかー、なら1000とかにもなるのか? なら努力し続ける価値はあるな。基本的に努力家なんだよ俺は)

《そうですねー、努力が数値に現れますから実感も湧くでしょうね。それにカーズさんが努力家で勤勉なのは知ってますよー、(・∀・)ニヤニヤ》

(なんでニヤニヤすんだよ、凡人が天才に勝つには努力するしかないだろ。コツコツ努力するのは好きなんだよ。才能に胡坐かくよりマシだろー?)

《ドМですね》

(なんでそうなる?)

《だって自分を追い込んで苛めて鍛えるってことでしょー? ドМですよドМ(笑)》

(せめてストイックと言えよ。全世界の努力家に謝れ!)


 全くいつも通りだな。だがこの馬鹿なやり取りをしてると安心する。今日は単独行動で変に緊張したし。軽口を叩けるのって気楽だ。アリアが傍でサポートしてくれると楽なんだけどなあ。


(アリアはこっちに実体化できないのか?)

《どうしました急に?》

(いや、傍で色々サポートしてくれたらありがたいなあって。退屈もしないしさ)

《うーん、出来なくもないですよー。ですが実体を喚ぶとなると、召喚魔法でカーズさんが召喚するという形になりますね。因子で私たちの魔力の回路パスは繋がっているので、それなら実体化は可能です。でもまだそのスキルはBランクですよね、せめてSランクくらいにならないと神そのものを喚び出すのは難しいですよ。MPもかなりの量必要になりますしねー。それに召喚ランクが高い程、喚び出した対象の能力値に上昇補正がかかりますよー》

(召喚かー、テイミングで従わせた魔物を喚び出すってやつだったよな。確かに使いどころがなかったもんなー。うーん、いきなり岩礁に乗り上げたな。いつかは実体を召喚してやりたいけど……、今は無理か。でもせっかくお金も稼げたし、アリアに美味しいものたくさん食べてもらおうと思ってたのになあ)

《むむっ! 何ですと! 美味しいものですと!》

(そうだよ、美味しいもの食べたいって言ってたじゃないか。結構稼げたし、アリアに美味しいものごちそうできるかと思って。でも俺自身が一人で食べる量なんてそんなに多くないだろ? だったら直接自分で選んで好きなもの食べてもらった方がいいなーって思ってたんだよ)

《な、なるほどー。なかなかやりますね、カーズさん。じゅるり……》


 こいつ、食い物でそんなに食いつくか? チョロい、チョロ過ぎるだろ。神様なのに……。これは押せばいけそうだな(笑)


(それに今回みたいなことは人手がいる方がいいしな、それがアリアなら信用も出来るし、戦力的にも十分過ぎるだろ? あーあ、何でも食べれるくらい頑張って稼いだのになー。それにアリアの御陰でもあるし、食べてもらえないのは残念だなー。喜んで欲しかったのになー)


 こんなの勿論煽りだよ。でもあと一押しで落ちるな。こんなちょろい駆け引き、仕事でもしたことねーよ。


《むぐぐー、策士ですね……、カーズさん。こんな的確な報酬をチラつかせて神を翻弄するとは……。ぐぬぬー》


 いや、策もくそもないよ。自分の欲望と戦ってるだけだろ(笑) 勝手に自分から翻弄されてるしな。


《わかりました。ちょっと時間を下さい。神が下界に降りる際は本当の肉体ではなく、本物そっくりに調整した入れ物、義骸ぎがいというものを使用します。神の能力を多少制限するので、本来の力よりは下がりますけど、十分でしょう。また下界に降りて剣を振るうことになるとは……。ふふふー……、燃えてきますね》


 いや、食い物食べたいんだろ? 義骸ねー、死神の漫画で読んだことあるぞ。それと気になってたことがある、今なら聞けるだろう。


(もう武器は使わないとか言ってなかったっけ? 昨日夜に話してただろ?)

《あー、あれはもう大虐殺など起きないと思っていたし。無辜の民に刃を向けたくなかっただけですね。でもカーズさんに言った通り、正義と公平の名の下に悪は容赦しませんよ、ふっふっふー》


 軽い、あんなに重そうに言ってたから気を遣ってたってのに。こいつは悉く斜め上をいくな。


《ということで、カーズさん。朝には戻ります。ちゃんと魔力コントロールして女性体にならないようにねー! では、アデュー!》


 行ってしまった。しかし短い葛藤だったな。何とまあ行動が早いというか、暇を持て余して刺激に飢えてるのか。行動力、すごいわ。まあいいか、一緒に行動できるなら楽しいだろうし。どっと疲れが出た俺は魔力のコントロールも忘れて、泥の様に眠るのだった。




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<カーズ(・ロットカラー) ∞歳(18~20歳相当)男 魔法剣士ルーン・セイバー>

称号  :女神の戦士

Lv   :56(+50/装備補正)

HP   :3950(+500/装備補正)

MP   :6000(+500/装備補正)

筋力   :250(+250/装備補正)

敏捷   :360(+150/装備補正)

魔力   :4300(+350/装備補正)

物理耐性 :270(+2750/装備補正)

魔法耐性 :370(+2750/装備補正)

幸運値  :150(+100/装備補正)


<装備>

<アストラリアソード(S:カーズ専用)>

物理攻撃力:1250

魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)


<女神刀(S:カーズ専用)>

物理攻撃力:1250

魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)


<アストラリアナイフ(S:カーズ専用)>

物理攻撃力:1250

魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)


<バトルドレス(S:カーズ専用)>

物理耐性:1200

魔法耐性:1200(込めた魔力量により最大値増加)

付与効果:自動回復オートヒール(S:100/秒でHP・MPを回復する)

    :状態異常耐性(S)

    :魔力ヴェール(S:物理/魔法防護膜を自動展開/

             込めた魔力量で範囲/効果上昇)

    :HP+500

    :MP+500

    :筋力+150

    :敏捷+150

    :魔力+150

    :物理耐性+150

    :魔法耐性+150


<ドラゴングローブ(S:カーズ専用)>

物理攻撃力:1250

魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)

物理耐性 :550

魔法耐性 :550

付与効果 :衝撃追加アディショナル・インパクト

      (S:竜の息吹ドラゴンブレス:込めた魔力属性のブレスが発動)

     :筋力+150

<ペガサスブーツ(S:カーズ専用)>

物理耐性:350

魔法耐性:350

付与効果:飛翔フライ(魔力を込めると発動)

<グリフォンプレート(S:カーズ専用)> 

物理耐性:550

魔法耐性:550

付与効果:魔力+150

    :幸運値+100

    : Lv+50(S:レベル上限アップ)

<アストラリア・リング(S:カーズ専用)>

物理耐性:100

魔法耐性:100

付与効果:自動回復オートヒール(S:100/秒でHP・MPを回復する)

    :状態異常耐性(S)

<アクティブスキル>

アストラリア流格闘術(全武器対応/奥義×)

聖魔法(A)

闇魔法(B)

火魔法(A)

水/氷魔法(A)

風/雷魔法(A)

土魔法(A)

時空魔法(B:空間転移)

空間魔法(A:異次元収納庫ストレージ)

召喚/テイミング(B)

鑑定/弱点看破(S)

空歩<瞬歩<光歩

追跡(S)

探知/逆探知(S)

|鷹の目《ホーク・アイ

千里眼せんりがん

気配遮断(S)

標的化ターゲッティング

魔法/武具創造(A)

精神耐性(SS)

心眼(S)

明鏡止水めいきょうしすい

未来視プリディクト・アイズ

魔眼(S):魅了テンプテーション(込めた魔力属性で様々な幻覚を見せる)

通信/念話

物理結界

魔法結界

<パッシブスキル>

アストラリアの加護(SS:全耐性大幅アップ/日に1度致死ダメージ無効化)

偽装フェイク(S)

隠蔽(S)

言語理解(S)

交渉術(S)

並列同時思考加速

自動回復オートヒール(装備重複SS:200/秒でHP・MPを回復する)

超成長(経験値/スキル)

経験値共有(PTへ分配)


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続きが気になる方はどうぞ次の物語へ、♥やコメント、お星様を頂けると喜びます。執筆のモチベーションアップにもつながります! 

一話ごとの文字数が多いので、その回一話でがっつり進むように構成しております。

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