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 帰り際、ちょっと買い物をしようと、史都は別の路線に。で、その地下鉄の駅『中登呂なかとろ』に下ってみますと…


「誰もいません〜」


 そうなんです。まもなくホームに来てみれば、あら不思議、そこには人っ子一人おらんのです。


 かたや、向かいのホームには、それなりに人影があるんですけどね。


 でもま、そんなこともあるのかと思いつつ、史都が待つうち、やがて当ホームに列車が滑り込んで来ました。


 来ました…が、なんと驚くなかれ。それはそれは黒光りする蒸気機関車に牽引された、やけにレトロな感じの旅客列車じゃありませんか。


 ふ〜む、どこか地方の鉄道じゃあるまいし、今時この辺りを蒸気機関車が走っているとは、ほんと驚きです。


 おまけに、ぷわっ…その煙突から出る黒煙が、ホーム全体に充満してわろし・・・


「なにか特別な列車でしょうか〜」


 疑問を口にしながらも史都は、停車するや開いたその扉から、同列車に乗り込みました。


 それを見送るのも、なにかと時間のロスだと思ったからです。


 はてさて、2人掛けの座席が向かい合わせ、かつ左右2列に並ぶ中、史都が適当な席を選んで座りました。


 しかし、やはり他に人の姿は見当たらず。


 ええ、少なくとも当車両には、史都の他は誰も乗っていないようなのです。


「なんだか不思議な列車です〜」


 と、史都が呟くのと、ぽうーっ…という汽笛の音が重なったかと思えば、金属音を響かせ、ゆっくりと汽車が動き出しました。


 蛍光灯から柱から、椅子や自販機その他、ホームの景色が徐々に置き去りにされてゆきます。


 とまあ、そこまでは普通の地下鉄で見る光景だったんですが…


 どっこい、それから数分が過ぎた後のこと。ふと、その列車が地上に出たところで、これまた驚くなかれ、なんとそれが…!

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