第10話 王様が来た
「兄さん、起きて」
窓の外に王様らしき人物が見えて、ユミルがユークを起こす。ホントにくるのかよ......。王様が、宿屋に? つまり、そこまでしてユークに会う必要があるってことなんだろうな。
ユークって、本当にわからない。ユミルはその強気な性格と思ったことをはっきり言う態度でわかりやすい。だけど、ユークは正反対だ。秘密が多いし、感情もあまり表に出るほうではない。
「ユーク殿。回復しきっていないにも関わらず悪いのだが、礼を言わせてほしい。今回の魔車爆弾無差別殺傷未遂事件の件、本当に、本当にありがとう。皆を助けてくれたこと、感謝する」
いや、『回復しきっていないにも関わらず』じゃないだろ。わかってんなら回復待てよ、王様......。礼を言うタイミングが違うと思っているのは俺だけか? 俺の常識が足りてないのか? 教えてくれる人はいない。というか、口を開けるわけがないんだよ。この場の雰囲気に呑まれているのは俺だけだ。仕方ないと思いたい。前世も今世も常識が色々ずれてるんだ、いい加減自覚してる。
「ああ、いいですよ。己の能力を最大限利用しただけなので」
下手したら死ぬとこだっただろうが。何当然のように言ってんの?
「兄さん、死にかけておいて何が『いいですよ』なの? 少なくとも、融合は必要なかったでしょ」
うわ、王様を前にして言ったよ、ユミル......。すっごい度胸あるな。
「ユミル......嬉しいけど、礼儀を考えて発言してくれ。妹が失礼しました」
あ、嬉しいんだ。やっぱり、シスコンなのか?
「いやいや、兄思いの良い妹ではないか。構わないさ。こちら側の管理不足だからな。犯人は捜索中だ。何より、ユーク殿の状態が知れて私は嬉しかったぞ。こみいった話はまた後日だ」
あ、そこは後日にするんだ。いやちょっとまて、こみいった話ってなんだよ。王様と何を話すんだ? 俺、ユークのことほんとに知らないんだな。この数分の会話でそれをつくづく実感させられてるよ。
「ユミル殿、ユーク殿が回復しきってからこの魔術具の手紙で知らせてくれ。手間はかかるが頼む。日程はその後にこちらで組ませてもらう」
「わかりました」
「ユーク殿もお疲れだろう。私は帰るから休んでくれ」
......マジでなんで来たんだ、この王様。それだけのことならそれこそ魔術具使って連絡してこいよ。
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