第3話 山賊の襲撃
時が流れた。
俺は十七歳になった。あと一年で前世の享年と同じ年になる。最初の日の事件以来大きな事件はなく、平和な時間が過ぎていった。
体力がついてきた頃から始めた散歩をしながら、村の様子をチェックする。
「あ、サント様。見て、僕がお父さんのお手伝いして育てたお野菜だよ。もうちょっとで収穫できるんだって」
農作業をしていた、まだ六歳の子が自慢気に、無邪気に笑ってそう言う。
「そっか、楽しみだな」
前世の俺のように、誰も手を差し伸べてくれずに困っている人がいないことを確認するための散歩はいつしか、村民たちとの交流になっていた。
充実した、楽しい日々。前世ではあり得なかった幸福感。
だがそれは、突然終わりを告げた。
「おい、お前がサントとかいうやつか? 噂では聖人だとか」
山賊が、大勢の仲間を連れて襲撃してきたのだ。それだけならばよかった。荒業を使えばどうとでもなるから。
でも、今の時間帯は外に出ている人が多い。みんなバラバラの場所で作業をしている。護りきれない、という考えが脳裏をよぎった。
「逃げろ!」
声を張り上げた。みんなに聞こえるように願いながら。
「俺が、村を護る。相手になってやるよ」
全力を尽くしても、時間稼ぎにしかならないかもしれない。そうであったとしてもやるしかない。
「殺戮守護者!」
無数のナイフが出現する。あの時よりもずっと多い。十三年の時を得て、俺の異能はさらに強化された。そうやすやすと突破はさせない。
「乱舞刃!」
縦横無尽に飛び回る刃が山賊たちを切り刻む。けど、相手が多すぎる。ちょっと無茶をしてでも全滅させてやろうか。
「急所直撃!」
俺が村を護る。命に変えても。やっと手にした幸せを壊されたくはない。急所直撃を繰り返して、俺は山賊たちを一人、また一人と葬っていった。護りきれるだけの力がでるのか不安だったけど、杞憂だったようだ。これなら村を、みんなを護れる......!
円月輪と柄のないナイフが宙を舞う。身体は激しい動きと異能の使い過ぎで熱を帯びている。ヒュ、と刃が空を斬った。クラクラし始めた頭と動きの鈍くなった身体に鞭を打って再び駆け出す。
あと、一人。山賊の頭だけだ。その胸元に潜り込んで、刃を突き刺す。柄のないナイフを握っていた自分の手も切れた。辺りの血の匂いが一層濃くなる。
__ああ、終わったんだ。全ての山賊が地に伏せている。ついさっきまで俺と対面していた頭を含め、すでに彼らは誰も息絶えていた。あの日の彼のように肉塊になりかけた状態の人間が広場に転がっている。
もう、だめだ......。意識が暗闇に落ちた。
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