第4話 【ドラ〇もんの足ってほんの少しだけ浮いてるけど、あれってなんで浮いてるんだろうね? えっ、足を浮かせるだけのスキルですよ? 他に質問は?】

「本日、皆様に検討して頂くスキルは、こちらになります」



 ===== ===== =====

 【ドラ〇もんの足ってほんの少しだけ浮いてるけど、あれってなんで浮いてるんだろうね? えっ、足を浮かせるだけのスキルですよ? 他に質問は?】

 地面から足をほんの少しだけ浮かせて、歩くことが出来るスキル。足音を消す事は出来ず、足が地面に向かって降ろされる度に、ペタペタペタと可愛らしい足音が出ます

 ===== ===== =====



「「「なにこれ?」」」


 僕、鯉池さん、そして蟹巻。

 3人の意見が一致した瞬間である。


 ……いや、ていうか本当にナニコレ?


 なんでスキル名に、伏せ字が使われてるんだよ?

 あと、「他に質問は?」って、どういう意味なんだよ、これは……。


「神様めぇ……クッソみたいなハズレスキルを出しやがって。死ね、死ね、死ねぇ!!」

「そもそも、ドラ〇もんって、なんなのかしら?」


 2人も同じように、微妙そうな表情を浮かべていた。


「----では、皆さま。ハズレスキルかどうかの討論、よろしくお願いいたします」


 斑鳩さんがそう言うと同時に、蟹巻は「討論の意味などない」と断じた。


「こんなふざけた勢いで作られたものなど、ハズレスキルでしかないだろうが。ただ、地面からほんのり浮かぶだけで、足音が出るのでは使いようがないだろう」

「そないに言われても、もし化けたら足音が消えるんだったら、化けるんじゃないんでありんす?」


 確かに、その可能性はある。

 足音もなく移動できるのだったら、暗殺とかに使えそうなイメージもある。


 そういう意味では、化けたらヤバそうなスキルになりそうな感じもある。


「----ふんっ。それなら、試してみれば良いだろうが」


 蟹巻は不満気にそう言うと、パチンッと指を鳴らす。


 すると----



 ===== ===== =====

 【ドラ〇もんの足ってほんの少しだけ浮いてるけど、あれってなんで浮いてるんだろうね? えっ、足を浮かせるだけのスキルですよ? 他に質問は?】(覚醒版)

 地面から足をほんの少しだけ浮かせて、歩くことが出来るスキル。足音を消す事は出来ず、足が地面に向かって降ろされるたびに、ペタペタペタと可愛らしい足音が出ます

 覚醒することによって、足音を「ペタペタペタ」「ピョコピョコ」「ポテポテポテ」という3種の音から選ぶことが可能となります

 ===== ===== =====



「なに、これ? 覚醒版?」

「ふんっ、この蟹巻様は元々はスキル開発部のエース様だぞ? 他のスキルと併用して異常がないか調べたりと比べれば、スキルの覚醒した状態とそうでない状態など、変化させることなぞ簡単だ」


 スキル開発部……?

 つまり、こういうスキルを作ったりしていた部署、という事だろうか?


 まぁ、そういう部署ならば、ハズレスキルを覚醒した状態にするのも訳ないか。


「しかし、覚醒したところで大したスキルではないな。ただ、足音を変えられるだけだ。こんなスキルなぞ、化けようともせず、ハズレスキルのままだろう」

「確かに、そうでありんすなぁ。音が消せるのなら、もっとやりようがあったかもしれないでありんすが」

「俺の意見と全部一緒にすんな、ケバ女。あと、死ね」


 「だが、無意味な議論が終わりと言うのは良いな」と蟹巻はそう言っていた。


「おい、そこの男。お前も、この長いだけのハズレスキルが----化ける可能性なし、というのに同意見だろう?」

「まぁ、化けても足音が消せないなら、そういう風に思えるかもですね」


 そう、浮いているのなら、足音がなく近寄れるのなら、そりゃ強いスキルなのかもしれない。

 しかし、覚醒しても足音が出るなら、それは確かにハズレスキルかも知れない。



「ただ、このハズレスキル----普通に使えますよね?」



 僕がそう言うと、蟹巻はキョトンとした顔をする。


「おいっ、それはどういう----」

「だって、このスキル。足を浮かせたまま移動できるんでしょう、だったら"座ったまま移動とかもできるのでは"?」


 このスキルは、地面に"向かって"足を振り下ろした時のみ、ペタペタペタなる足音が出てくるのだ。

 しかし、別に足を振り下ろすだけが、移動する方法ではない。


 例えば、ワイヤーを張って、そのワイヤーを引っ張ることで、移動することも出来る。

 物がなくても、お尻を振って移動する尻移動というのも、方法の1つだろう。

 なにも、足を使って移動するだけが、移動の方だという訳ではない。


 そして、このスキルの説明から見て、足を使っての移動した時"だけ"、特徴的な足音が出てくるという事なのだとすれば、このスキルはその気になれば、無音で移動できるというスキルになっているんじゃないだろうか。

 

 元のスキルが、ただ足を浮かせるだけのスキルと考えれば、「無音で移動することができるスキル」というのは、化けていると言っても過言ではないだろうか。


「僕はそう思うんですけど、皆さんはどう……」


 もうその時には、結論は出ていたみたいだ。


 鯉池さんは「そうやねぇ~」と納得して、蟹巻の方も不服そうながら納得していたのであった。




(※) 調査報告 レポートNo.006 (※)

 ハズレスキル候補 【ドラ〇もんの足ってほんの少しだけ浮いてるけど、あれってなんで浮いてるんだろうね? えっ、足を浮かせるだけのスキルですよ? 他に質問は?】

 『地面から足をほんの少しだけ浮かせて、歩くことが出来るスキル。足音を消す事は出来ず、足が地面に向かって降ろされるたびに、ペタペタペタと可愛らしい足音が出ます』

 ……との事でしたが、【ハズレスキル研究会】の鹿野末様の報告によりますと、このスキルは足を浮かせた状態での移動、例えば『ワイヤーを引っ張っての移動』や『お尻を動かしての移動』など足を使わない移動の際には足音がなく、移動できるスキルになると思います

 また、後で【ハズレスキル研究会】の蟹巻の検証により、実際に足を使わない移動であれば、足音が出ないことが判明しました

 対処としましては、『移動の際には足音が鳴る仕様』への変更を提案させていただきます

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る